第26話 026

熱いシャワーを浴びながら、なかなか収まらない心臓の音を聴く。


初めて本気で、後ろめたいと思った。


これまでの数日が、運が良かっただけだ。

明里は俺のアパートには来た事がないし、これからも、来ない。

それは分かっていたから、何とかなると思っていた。


なのに、電話一つでこんなにも不快感が消えないなんて、思ってもみなかった。


昨日風呂入れなかったから、シャワー浴びるわ、

と、いつもならもっと長くなる電話を切り上げて、ゆかりの顔を見ないでユニットバスに逃げ込んだ。



頭の中を整理しようと思っても、もう、何からどう思い出せばいいのか、余計に混乱するだけなのに、考えなくちゃ、という単語だけが、繰り返し浮かんでは消える。

それを、シャワーで押し流そうとすればするほど、妙な鳩尾みぞおちの違和感が増していく。




どのくらい、そうしていただろう。


諦める以外の方法がなくて、

ゆっくりと、水流を止めた。

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