第14話 014
月々3万9800円。
が、15年。
年間47万7600円。
って事は、716万4000円。
利子ありって考えると、、、
500万から600万ってとこか、、、。
716万。
ざっくり1000万。
「カズキ? 何か考え込んでる?」
テイクアウトで買ってきた牛丼つゆだくを丁寧に食べながら、ゆかりは俺を覗き込むように見ている。
可愛い。
確かに可愛い。
こいつが家に居て、好き放題。
飼い主は俺。
こいつはペット。
そう思えば、安い。の、かもしれない。
でも。でも、だ。
俺には明里がいる。
時間さえあれば、子供も欲しい。
出世もしたい。
金も欲しい。
ってゆーか、
そもそも、女なんて必要ない。
今ある以上には。
「あのさ、ゆかり」
箸を置いて、ゆかりをもう一度ちゃんと見る。
「ん?」
目線を上げたゆかりが、髪を耳に掛けて、喉を揺らして口の中身を飲み込んだ。
喉仏が上下する。
それから、箸をするっと舐ってから、聴こえない音を立てて唇から離した。
唇から。。。
お願い。返品しないで。
一瞬触れた感触が、まざまざと蘇った。
「カズキ? どした?」
キョトンとしたゆかりの瞳には、何の疑いもなく、俺が映っている。
「カズキ?」
箸を置いて、その細い指を、俺の頬に伸ばしてくる。
触れれば、同じ体温のある指。
伸ばされた腕には、赤茶色の痛々しい痕がいくつも浮かんでいる。
「カズキ?」
名前を呼ぶ声は、紛れもなく、そこに居る、生きてる声だ。
「ゆかり」
本物かわからないけれど、
名前を呼べば、
「うん?」
本当の声が返ってくる。
テーブルに置かれたビールの空き缶は5本。
酔っ払うには少し少ない。
言い訳にするには、
全然足りない。
「俺、もう寝るわ」
伸ばしかけた手を拳にして膝に押し当てて、
ゆかりが手を引くよりも早く、
立ち上がった。
昨日は、ゆかりをソファーに寝かせた。
今日は俺が、ソファーで寝よう。
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