第9話 009

俺は滅多に夢を見ない。

予感めいた事を感じたこともないし、テレビの占いコーナーも見ない。


なのに、

夢を見た。


映画でも見てるような、壮大なストーリーで、

多分、身体はもう起きているのに、しばらくの間、目を開けることが出来なかった。



「なるほど。宇宙戦争とアイアムヒーロー? だっけ? が合わさったような夢だね」

「どっちかっていうと、バイオハザード?」

「あー、って、それじゃホラーじゃん」

「え? バイオハザードってホラーなの?」

「ホラーじゃないの? アマゾンとか検索すると、ホラー、でバイオハザード出てくるよ?」

「へー」


もう太陽がてっぺんを通りすぎた頃。

ゆかりと俺は、届いたばかりのピザとコーラを分け合っている。


俺が寝ている間にシャワーを浴びたのだろう。

1日前の化粧が縒れて貼り付いたようにくすんでいた顔が、スッキリとワントーン明るくなって、おまけに俺のお気に入りのTシャツを着ている。

しかも、俺のトランクスをハーフパンツ代わりにしている始末だ。


その下、ちゃんと履いてるんだろうな?


と、聞く前に、


「ねぇ、お腹減った」


と先を越されてしまった。


慣れてんだな。

俺が何人目の「飼い主」なんだろう?

ってゆーか、なんでこいつ、売られてたんだ?

いやいや、その前に、俺だよ。俺。

これって人身売買?ってやつだろ?

どーすんの?俺。

会社にバレたらクビじゃね?

ってゆーか、現時点で、犯罪じゃね?


まてまて、それもだけど、

嫁に殺される。

いや、殺されるようなことはまだしてないけど、、、

って違う。まだってゆーか、する気もないけど!

ないけど!

状況だけでも、アウトじゃね?

あいつ、風俗オッケーだっけ?

そう言えば、病気にならなければ適度に呼べよって言ってたけど、それはギャグだよね?

って何考えてんだ俺。


ピザの味がしない。

 

「テリマヨさいこー❤️」


と、ぎゅっとパーツを寄せて笑うゆかりに、曖昧に、そうだね、と答えながら、無理やり口の中身を胃に送り込んだ。


「そう言えばさ、あなたの名前は?」


一心地ついたのか、指に付いたソースを舐めながら、ゆかりが初めて俺の目を真っ直ぐに見た。


「。。。カズキ。植原和樹」

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