第6話 006

正直、記憶がない。


転勤になるからと、古巣になる支部の面子と飲みに行った。


新型コロナがなんだで、目当ての店は早仕舞いで、

大御所の営業の客の店とやらに転がりこんだ。



そこまでは覚えている。



結婚一周年記念に嫁に貰った薄いブルーのネクタイに、赤ワインを零されたことも覚えている。

薬指の指輪の値段を、新人に言い当てられたことも、覚えている。



それなのに、

肝心なところだけは、

モヤがかかったままだ。



どうやってアパートに辿り着いたのか。

どうやってパソコンを開いたのか。







そして、



どうやって、





そのクリックを選んだのか。

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