ルコークの朝

「トワイナさん。魔法詩人のあなたに、お願いがあります。私、海が見たい。このメゲナの川のずっとずっと先にある、海が見たいのです。メゲナの月光の妖精は、この土地をはなれることはできません。私の夢は一度でいいから海を見ることです。┅┅私に海の魔法詩を観せてくれませんか」

テルフィンはそう言って、トワイナをじっと見ました。

「いいでしょう、テルフィンさん。ぼくの海の魔法詩でよろしければ、お観せしましょう。ぼくはこの先の港町、ルコークから来たのです。新作の魔法詩でまだまだあまい完成度ですが、よろしいですか」

トワイナはテルフィンにたずねます。

「はい!」

テルフィンの顔は、よろこびでいっぱいでした。

「わかりました。では┅┅」

トワイナは旅の袋から、魔法詩集の本を取り出しました。

「ルコークの朝、という魔法詩集です。テルフィンさん。ぼくの肩にのってください」

テルフィンはトワイナの右肩に、ちょこんとすわりました。

「はじまります。よろしいでしょうか」

トワイナは魔法詩集を開こうとします。

「はい。どうぞ」

テルフィンは、魔法の本をながめました。

トワイナが魔法詩集の本を開くと、詩集から女性のような声がしました。


『ルコークの朝』


その声は、詩神エルナーのつかい、詩天使の声でした。

魔法詩人は魔法を詩にこめて、魔法詩集にチカラを封じます。

詩神エルナーと詩をむすんで、詩天使の声を本にとどめることができるのでした。

魔法詩人のチカラはそれだけではありません。

トワイナが本のページをめくると、魔法詩集から映像が浮かび上がったのです。

魔法のチカラ、魔法詩人のチカラは、魔法詩集に命をふきこむことができるのでした。

魔法の詩集は、詩天使の声と詩の景色をいつでもどこでも再生できるのです。

魔法詩人は心の詩などに、自由な風景を編むことが可能でした。

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