第43話 私の私。

人生って、本当に不思議。何が起こるかなんてわからない。

これは望美の口癖だ。

しかも、中学一年生でこの言葉を口にしたわけだから、その言葉が頭からずっと離れないままだ。


物心ついたときから、私は両親のもとで育ってきたわけではない。

外側から見れば、両親のいない、孤児、可哀想な子、なのだ。

でも、私自身、それをかんじたことがない。

両親がいなくても育ってきた。

それぞれに理由のある子たちと、共に、粘り強く生きてきた。

中には命を落としかねないと保護された子もいれば、両親を事故で亡くした子もいる。

そんななかで生きてきたわけだから、当然私は、強くならざるを得なかった。


私の記憶は辿れば辿るほどに、とてつもなく頭痛がする。

その頭痛を少し我慢してなんとか思い出すのは大切にしているべあの服を作ってくれた、女の人・・・お母さんなのかな。

そのあたりしか思い出せないのである。


そんな私に、両親が健在であることがわかり、そこから住んでいるところまでわかっていても、そこから何年とたつのに会うことができない。

逢いたい、そして、今までの思いの丈を伝えたい、そんな気持ちと、

今までの自分を全否定したくないから、会う必要もないし、むしろなんで今さらという気持ちが行ったり来たりするようになった。

時間が解決するだろう、そんな甘い話ではない。

そして、そんな簡単な話ではない。


あんなに羨ましかった、家族という形。

それは自分自身が大人になって結婚して、そこでつくっていくものとしようと、与えられる、当たり前にある、そんな家庭というものは私にはなくて、私がつくっていくものだと。

とはいえ、そのお手本となるものはない。

だからずっと恋をしなかった。

漫画を読んでも、恋に、発展して、恋愛、発展して、愛情、発展して結婚。

その、ゴールのような家庭が全く想像ができなかった。

と、同時に不安でもあった。

私の中の私は、相当な頑固者のようで、こうと決めたらこう。

そして、例外がない。

家庭というものにおいては、経験のないことであり、初体験なのである。

恋をする=結婚、これをどうしてもあてはめてしまうのだ。

あながち間違いではないとも思う。

愛情があれば、ずっと一緒にいたいと思うのだから、いろんな段階をふんで、結婚にたどり着くこともあるだろう、でも。

私にはその、結婚、家庭をつくるということに抵抗があるのだ。


好きな人とは言っても名ばかりで、いいなと思ってるだけで実際何のアクションも起こさない、いわば、憧れ、または、お花を見てきれいだなと思う程度の好きな人。

深く思うことはない。

また、深く思うことも少しだけ不安だったりする、自分のなかで、

セーブしていたのかも知れない。

私の中の私はそんなかんじで、無意識レベルの保身がある、そして、自分の知らないうちにいろんな感情を溜め込んできたのかもしれない。


それが、両親に会えない理由だと、私の中の私に言い聞かせているのだと思う。





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