第42話 レモンサワー。
祐也くんはレモンサワーが大好きだ。
顔を見て、ビールをグビグビと飲むかんじではなかったけれど、お酒は飲むタイプらしく。
レモンサワーを何度もおかわりしているのを見ていたので、手土産は自分用に、フルーツのジュース、祐也くんのはレモンサワー。
普段お酒を飲まない私には、どれがおいしい、どれが売れている、そういうことはわからなかったけど、見覚えのある缶を何本か、買った。
祐也くんと手をつないで、歩いて、着いたのはとても小綺麗なマンション。
ワンルームのその部屋に通されたときに、ふっと、いい香りがした。
「お香をたいたの?」
聞くと、祐也くんは笑ってうなづく。
「だって、男の部屋ってすごく臭うんだって!」
と言った。
変態かどうかは別として、好きな人の香りは嫌なものではないと思う。
むしろ安心の材料とさえ思うのだが・・・。
二人で立つには少し狭いけれど、きれいに整頓されたキッチンは使いやすく、料理も捗る。
リクエストは、オムライス、サラダ、スープ。
玉ねぎや鶏肉を小さく切って炒める。
その匂いだけでもうお腹がすいたと、祐也くんは言っていた。
ニコニコしながら、作っている私に、
「こっち向いて!」
と祐也くんが言う。
私は、そちらを向くと、スマホで写真を撮られていたことに気づき少し恥ずかしい。
でも、嬉しい。
感情が高ぶると、料理が雑になってくるのに・・・。
出来上がって、祐也くんとお皿を並べて、向かい合って、いただきます。
そこで、レモンサワーの存在を思い出す。
「これ!」
と言って差し出して、その横に、小さなチョコの箱と、フルーツのジュースを見つけた祐也くんは、
「後で、飲もうね」
と言って、ご飯を食べ始めた。
オムライスにはもちろん、お互いの名前をケチャップで書くという、とってもベタなこともした。
それをまた、写真に撮って残していた。
食べるのが遅い私に合わせて、いろんな話をしながらたくさん食べた。
ごちそうさまをして、お皿たちを洗っている間、食後のデザートの用意をしてくれた。
早々に終わらせて、席に着く。
そして、祐也くんはレモンサワー、私はりんごジュースで乾杯。
小さなチョコの箱を開けてみせた。
並んでいるスイーツのコーナーの端にあったのだが、チョコの品の良さに一目惚れをしてしまったことなどを話して、深い味わいに舌鼓をうった。
そして、祐也くんの小さい頃からの写真がつまった1冊のアルバムで、盛り上がる。
ここで、自分の生い立ちを話すか、とても迷う。
でも、まだ、私の中ではちょっと引っかかることがあり、打ち明けることができなかった。
その日は、ほっぺとおでこのキスに加えて、抱き合って、
恋人らしいキスをした。
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