第39話 新しい風。

学年が一つ上がる頃に。

例のタイガーマスクが新学期用の文具や、雑巾、その他手提げバックなど・・・。

新調してもらえるのはフレッシュな気持ちになる。

また新しく頑張ろうって言う気持ちになる。

一つ一つの荷物に、

「藤本結良」

を書いていく。

それがきれいな字で書ければ書けるほど、気分がのってくる。

入学式の日、みんながお父さんやお母さんと思われる人たちと歩いている姿を横目に職員と手をつないで通学路を確認しながら入学式に行ったのを覚えている。

あの時のランドセルは大きかったけれど、小学校4年くらいから、小さく感じて、ランドセルのベルトを調節したりしてみたけれど、やっぱりもうランドセルが嫌だと言って、布バッグに変えた。

でも、小学校6年生の時に、あと一年でこれは使えなくなるとわかったとき急に恋しくなって、ランドセルで無理やり登校していた。

教科書も毎年、なくす子のために取っておいた。

案の定、だれか、国語の教科書残してる?などがあったので、名前のところに二重線で消して譲ってあげた。

私はなんでも物持ちがいいというのが取り柄の一つだ。

教科書に折れているところなどはほとんどない。

角が少し潰れてるくらいだ。

いつも、教科書をなくしたら、結良に聞けと言わんばかりに、なくした子たちがくる。

そして、譲ってあげるのだが、そのなくした教科書につき、複数人譲ってと言われることがあり、困ることもあった。

そういう時はジャンケンをしてもらう。


中学校に上がる頃には、入学式に制服を着ていくことがイヤでイヤで、仕方なかった。

採寸に行った時からちょっと嫌だったのもある。

独特の匂いが苦手だったのもあるが、個性が消されることが嫌だったのが大きな原因だと思う。

そういうちょっと変わったところもあって、入学式には遅れて参加している。

中学校から望美と出会って、いろんなことを覚えた。

最初声をかけてくれたのは、望美だ。

小学校も中学校も、施設から通ってる学区なため、多少の偏見がある。

わかっていたことなのだが、現実に直面すると、なかなかの攻撃力ではあるが、当時は仲間も沢山通っていたから、その分少し心強い部分もあり、堂々とするように言われていた。

望美はそんな偏見だとか、いろんな壁をたたきつぶして、私に声をかけてくれ、いつも気にしてくれ、登下校もずっと一緒だった。


望美とはいまでも大親友で、一緒に泣いたり笑ったり、してきた。

その中で、育まれた友情は一生ものだと思う。


中学校の通学バッグは色違い、かけるキーホルダーもお揃い。


そして、教科書に名前を書くのは、私の役目となった。

望美は面倒だと言って、名前を書かない。

私は、盗難にあうこともあるし、落としたら大変だと思い、毎年進級するごとに教科書に名前を書いた。

ふざけて、望美の名前の後に♡マークを書いたりしていた。


進級するたびに新しい気持ちで出発する、何とも言えない清々しさが、

今現在、職場での、年度末を終えて4月になったときも同じような気持ちになる。


相変わらず、清々しく、真新しいバッグのように、いつものバッグを入念に手入れをして、出勤する。


けじめをつけてきちんと前に進むことは難しいようで、簡単だ。

それは自分の気持ち次第であることを小学校の頃から感じていた。









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