第33話 カレカノ。

「偽る」ということにすごく罪悪感を感じることもある。

でも、その、「偽る」ということで、全てがうまくいくこともあるから不思議だ。

最近になって、祐也くんの前で、過去の話を躊躇なく話せるようになってきた。

でもそれは、学生時代の話ばかりで全く家庭的な話ではない。

例えば料理を教えてもらったのは?というふうに聞かれたら。

私は、近所のお姉さんというふうに答えてきた。

全く、違和感のない答えという雰囲気で答えてきた。

祐也くんとの会話とも弾んだ。


紅葉してきて、冬も本番かと思われるほどで、でも、日差しはまだ秋。

会社帰り、祐也くんからメールがきた。

急だけど、と、食事の誘いだ。

そして、待ち合わせ場所に着いた。

祐也くんは少し前に着いていたようだ。


「待たせちゃった?」

と、ちょっと恥ずかしがってしまったけれど、祐也くんにはなしかける。

「さっき着いたところ、急にごめんね、行こっか」

そう言って右手をそっと出してきて、その手を恥ずかしそうな私の左手が寄り添った。


すぐ近くのカフェに入って、まずはお茶をしながら食事する場所を決めようということであたたかいカフェオレを飲みながら、ほっと一息付いた。

その時、向かい側にいた祐也くんが、少し赤い顔をして、話しだした。

私は何を言われるのか、不安と希望とが入り混じった変な感情だった。


「そろそろ、正式に俺たちつきあってくれないかな?付き合ってください!」

声は小さかったけれど、きっとずっと考えてくれていたのだろうというのがよくわかった。

そして、私はどうしようかとすごく迷ったけれど、過去のこともいづれ話さなければならなくなる。

それに、将来のことも考えるならば、また戸籍を取り寄せた時に自分の過去が暴かれてしまう。

そうなることも少し覚悟しなければならない、そんな気持ちのままの、返事。

どうしようか、一瞬でいろんなことを考えた、そして、口をついて出た。

「私でよければ・・・よろしくお願いします。」

言った瞬間、顔が急に赤くなった、そこから言葉が出なくなった。

祐也くんは、

「よかったぁ・・・いろいろ俺のことを見てくれるんだろうなと思って、嫌われないかなとか、心配だったりしたんだよね、正直。」

照れながら、話してくれた。

嫌うはずない、私の中でどんどん祐也くんの存在は大きくなっていく。

でも、大きくなると、将来が浮かんでくる、そうなると、自分の過去がすごくじゃまになることがある。

その、過去のこと、育った環境なんて、なにも悪いところじゃないのにどうして、こんなに後ろめたいんだろう。

私の普通は世間ではかわいそう、と思われちゃう。

それすら理解してもらえるのかも不安だった。

でも、それ以上に祐也くんへの気持ちは大きかった。


それから、祐也くんと、居酒屋に入り、とりとめもない話をしながらゆっくり食事をし、次の日も出勤だからと、お互いに自分の駅に向かった。

帰ってから、遅くまでメールをしていた。

今日から、「彼氏」ができました。

人生がバラ色・・・とまではいかなかったけど、感じたことのないワクワク感だった。

メールのやり取りが遅くまで続いて、祐也くんは寝たであろう、途切れたのに、なかなか寝付けなかった。

明日から、また、どんな毎日が始まるのだろう。

やはり、不安と希望が入り混じったなんともいえない感情だった。






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