第26話 黒か白か。
ある日、小学校の夏休み、宿題も終わらせて、自由研究とか、そういうのだけが残ってるのに、手につかない。
そこで、外泊や外出をしていない仲間たちと集まって、「オセロ」
をすることになった。
それも、小学生の低学年同士、高学年同士というやり方ではなく、低学年と高学年が二人1組となり、黒組、白組と言って戦ったのだ。
相談しながらオセロを進めていく。
一人でやる時と違うのは、次はあっちに置こうか、こっちに置こうかと一緒に悩んだりできること。
それが楽しい。
私はすごく変わった子だと思う。
でも、仲間との距離感は本当に居心地もよく素直でいられた。
「オセロ」を覚えたてのころは黒なのに途中から、勘違いして白だと思い込み、ゲームオーバーになったことがある。
黒か白だけなのに。
赤や緑があるわけじゃないのに。
黒か白だからこそ、間違えたのかな。
単純なものほど、複雑なものはないなと思う。
「オセロ」を何戦もしたあとは、お風呂の時間。
そのお風呂の時間ですら、オセロの話で盛り上がり、それはご飯のときも、寝る前ですら、オセロの話で盛り上がる。
その時の私は、誰かに近づくと、
「オセロ?」
と、聞かれるほどに、オセロ大好きっ子だった。
すぐに飽きるんだけど、また、したくなる。
塗り絵をしていても気が付けば、黒く塗りつぶしてしまう。
赤から青を重ね、緑を重ねて行く頃には、黒くなっているのである。
性格も、どちらかというと柔軟な方だとは思う。
だけど、黒か白か、いや、白黒はっきりという時もある。
こだわりがある部分についてはそれが顕著にでてしまう。
それは後に、大人になってもそうなのだが、とにかく単純ではあった。
そして、オセロのコマの白の部分に落書きをされたときは、
「白じゃなくなったぁ!!!」
と大騒ぎして泣いた。
ただ、落書きとは言っても、白い部分はのこっているわけで、赤いペンで落書きされていたのだ。
黒ではないからいいじゃないのと、説得されても聞かなかった私は、新しいオセロを買ってもらうまで、部屋からでなかったこともある。
そんな頑固さが緩み始めた頃、買い出しに出たときにサプライズで新しいオセロを買ってもらえたときは少し涙ぐんだほどだ。
すぐには買い与えないのはどこの家庭も一緒。
我慢を教えてもらったのだ。
壊れたから次々新しいのとはいかない。
落書きされたことで、悲しんだ、同じことを人にしてはいけない、物を大切にしなきゃいけない。
そういうことをしっかり教えてもらった。
私は大切にしようと、新しいオセロは職員に預けることにした。
落書きをされたり、コマが足りなくなるという心配はない。
思う存分、白黒はっきり付けられるのだ。
世間での白黒とはまた違うものだけど、それはそれで、白黒はっきりつけるなどと言いながら、遊んでいた。
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