第22話 数年間の母。
すぐに退院できると思って数々の不思議な検査を受けた。
1日入院したら帰れると思い込んでいた結衣子は看護師さんに、支払いのことなどを聞いていた。
思いとは全く違う答えが返ってくる。
「検査の結果しだいですよ、今はゆっくり休みましょうね。」
すぐに公衆電話に向かう。
家に電話してもまだ帰ってないだろう、そう思ったが、主人が出た。
「結衣子か、どうした?何か足りないものあるか?明日にでも結良と見舞いに行こうと・・・」
言葉を遮るように
「退院の日がわからないの、ねぇ、なんの病気なの?ただの貧血のはずでしょ?」
そういって、少し興奮したところで、急に血の気が引いて立っていられず、受話器を持ったまんま、座り込んだ。
とおりかかった看護師さんに助けられ、心配そうな声で話す主人の電話を切り、ベッドに戻る。
いったいなんなんだろう。
悲しくて一晩中泣いた。
次の日、面会時間になった瞬間、結良と主人がきた。
泣きたいのを我慢して、結良と楽しく過ごした。
面会時間が終わるころ、結良が、
「ママ、いっしょかえる」
と、言った時には我慢できず、涙が溢れそうになるのをすこし、あくびをしたふりでごまかし、
「ママはあと少しだけ、ここでねんねしてるだけ、すぐ帰ってきてくれるよ」といった。
その時、主人はママの代わりといってくまのぬいぐるみを買い与えたのをしり、クマのぬいぐるみに、見舞いでもらったラッピングのリボンを首にかけてあげた。
「もっとかわいいお洋服をつくってあげなきゃね、それまで、結良、待っててくれる?」
というと、半べそかいていたけれど、
「まってるよ」
といった。
二人を送り出し、また一晩中泣いた。
そして、検査の結果が段々わかってきたということで、主人と、私、ベビーカーで眠る結良、静かな部屋で告げられた。
「子宮がんです。」
そういえば、結良を産んだ後の出血が続くなとか、なんで、一か月に二回も三回も生理が来るんだろうと思っていたら、子宮に埋め尽くすほどのガンができていたが、どこにも転移していない、それが救いだった。
医師がいうには子宮をすべてとり、卵巣だけ残す、そういう手術になる、もしかしたら、卵巣も・・・。
もう、私は女性でなくなる気がした。
ガンってそんな簡単に言わないでよ。
結良が目覚めるほど、大声で泣いた。
でも、奇跡的に、どこにも転移がみられない、開腹してみて、あるかどうか、という話で、手術することになったのだが、予後は通院のみのはずが、その後、体力がどんどん低下していき入院はながびくのであった。
そして、働かなきゃいけない、入院費を稼がなきゃいけない、でも結良は育てなくちゃいけない、そこで、病院から、児童相談所を紹介され、泣く泣く結良を養護施設に預けることとなった。
孤児がいるようなところに、結良を預けることに何日も悩んだが、いくつも仕事をかけもつ主人も限界だったように見えた、私も主人ももう限界だったのだ。
結良を預ける施設のパンフレットをなめまわすくらい読んだ。
園長先生もきてくださった。
その、園長先生のひとがらをみて、意を決した。
「すぐ迎えに行きますが、しばらく結良のことよろしくお願いします。」
長い長い、闘病の始まりとともに、結良を迎えに行くという決意をした日だった。
結良の3歳の誕生日までもうすぐだった。
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