第19話 怒る。
ものすごい音とともに、びっくりして目を覚ました。
私よりも小さな子はみんな泣いている。
というのも、ホームは違うけれど、ウマの合わないお兄さんたちが、集団で喧嘩を始めてしまったのだ。
時計を見たら21時半すぎたころだった。
私はまだ、お休みを言ってから30分くらいしか経ってないのと、なのに、すでに寝ていたこと、そして、下の階から、小さな子の鳴き声がしていたことで、少し混乱した。
部屋は電気がついていて、同室のお姉さんたちも、険しい顔をしていた。
何かあったんだと思って、部屋を出ようとすると、
「ゆら!今だめだよ!」
と言われたので、仕方なくドアに聞き耳を立てていた。
混雑した感じのわーわーと叫んだりしている声と、それをとめる誰かの声・・・。
入り混じって、何か大変な騒ぎであることは間違いない。
こういう時、なぜかワクワクしてしまうのはまだ、私が小学校低学年だからなのだろう。
同室のお姉さんたちは、
「まーた始まったよ、どうでもいいんだけど!お風呂行きたいし!」
なんて、イライラしだす。
男同士の喧嘩なんてしょっちゅうなのだが、複数名どうしとなると、物が破壊されることよりも、けが人が出るので、職員も、大柄の職員、男性職員総出でとめにはいる。
話し合いをしろ、とか、そういうとめかたではない。
まず、離れさせる、届かないくらいのところまで離れさせる。
そして、離れさせたところで、鍵のついた部屋に、職員を一緒に、ここで話そうと、了承を得てから鍵をかけ、ゆっくり話す。
解決を導くのではなく、まず冷静にさせるのだ。
私はのちに、女の子なのにそのカギのついた部屋の常連になるのだが、とにかく冷静にさせること。
そして、自分から話すまで、世間話をしたり、けがをしていたら、手当てをしながら、他に痛いところや具合の悪いところがないかなどをみる。
ちょうど、お風呂の時間となった時に、職員と、喧嘩した当人同士をお風呂に招き、ゆっくり話して、解決。
男子はこんな感じで喧嘩の最後をしめくくる。
女子は最初からケガとかよりも、ココロのケアを先にされるから、単純にはいかない。
男子は手が出る分、すぐにうちとけるし、たんじゅんだったりしたけれど、女子はそうはいかなかった。
どこにいてもそんなことは同じ。
一般家庭でも一緒だろうと思っていたから、ちょっとクラスの男子が数人で何かちょっかいをかけてきても、全く動じることなくいられたのは、施設でそれよりもとんでもないことを目にしてきたからだろう。
結局喧嘩の原因は、バイクを倒してしまったことから始まり謝っても許してくれなかった、二人とも血が上り、それぞれのホームの男子に言いふらし、乱闘騒ぎになった。
と、いうことだった。
なーんだ、そんなことか・・・と、わかったころにはまぶたが重くて目を開けていられなかった。
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