第18話 理想、理想、現実。

思えば、私のかわりなんて、たくさんいる。

私ではなくてもこの仕事は任せてもらえるだろうと、いつも思いながら仕事をしている。

会社の先輩に、合コンなるものに誘われてから、その先輩は私にすごく優しくなった。

私の仕事はごくごく普通のOLさん。

コピーを部数ごとにとったり、データ入力をしたり、会議に出す資料やプレゼンなどの校正や、雑務。

私は必ずだれよりも早く会社に到着してしまう。

そして、掃除や、コピー機の紙を補充したり、なんだかんだと雑用をしている。

それをずっと見てくれていたのか、合コンに誘ってくれた先輩は、ゆっくり話したこともないけど、すごく真面目だから、誰に紹介しても恥ずかしくないと、自信をもっていたそうだ。

ただ、私は合コンじたいがあまり好きではなかったため、何度かお断りしていて、それが直接関係があるかは謎だったがどこかよそよそしい時もあった。

結局、誘いを断り切れなくなってしまったのだが、行ってみてよかったと、行ってよかったと、そう思った。

おかげさまで、祐也君にも出会えたわけで・・・。

ただ、一つ、気になってるのは、先輩は竹中さんのことが気になっていたと言ってたけれど、その後、竹中さんと先輩の間はどうなったのかなと、聞けるわけもないことを思い出していた。

竹中さんは望美と仲良くしてるし。


この会社に入社したとき、

「バリキャリ」

を目指していた。

でも、私の性格上、何事も慎重且つ、ゆっくりな、そんな姿勢では、バリキャリとはいかない。

近づけているかなと思ったのは、上司の次に指示してくれることが段々わかってきたこと、先読みして処理したことなどがきちんと評価されるようになったころからかな、と思う。

私が目指していたのは、できる女だとか、そういうのではなく、都合のいい女にだけはなりたくないということ、仕事とは何の関係もないと思いきや、けっこう関係があったりする。

なんでも任されることが都合のいい、ではない。

誰しも苦手なことはあるが、共通して、苦手、またはどうしてもそれを手掛けたくないとなると、頼みやすい人に頼もうとする。

いわゆる、押し付け、と呼ばれるもの。

そして、それを押し付けられても断れない。

都合のいい女になりたくない。

ならば、自分からそういう仕事もどんどんこなしていけば、都合のいい女にはならない、という理論だ。

そこで、なんでもやってきたのだが、私が風邪をひいてしまい、高熱のため一日だけお休みを頂いた日、会社では雑務、その他、名もなき仕事をする人が一人もおらず、ある意味私は、仕事のできる人という立ち位置になってしまっていたそうだ。

次の日、出社したころには、

「まだつらいでしょうに、大丈夫?」

と、声をかけられるくらいだった。

私はどちらかというと、体は丈夫な方だから寝たらほどほどによくなっていく。

そして、いつものように仕事をこなしていったのだが、そういう役目の人間がいなければ、大切な仕事までも、進まなくなるという、何に対しても言える、無駄なことは何一つないと。

理想論かもしれない、そうとられるかもしれないが、ここには無駄なことは何一つなかったのが、私の存在である、リアルで証明できた気がした。

バリキャリとはいかなかったけれど、自分もそのバリキャリの足を引っ張ることなく、会社の一員、必要とされているということに感謝し、はつらつと仕事をこなすのであった。




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