第15話 まわる、まわる。
小学校の頃はよく施設の職員と回転寿司に連れて行ってもらった。
それは月に一度連れて行ってもらえる、いわゆる、
「個人行事」だ。
その日はお気に入りの服を着ていく。
月初めに職員と、相談して日にちを決める。
それを逆算して服を選ぶ。
とても楽しみだった。
服はお下がりもあれば、買いにいける日がある。
オシャレには無頓着だったが、与えられると嬉しくなる。
このデザインじゃないとっていうこだわりがない分、買いやすいし、お下がりももらえやすい。
お下がりの予約なんてお手の物。
そんなこんなで、当日は朝は5時台に目が覚めて、朝ごはんはおむすびがおいてあるのでそれをいつもなら2個食べるのを1個にして、お昼に連れて行ってもらえる回転寿司の準備をしていた。
何も入ってない、というより、ハンカチくらいしか入ってないのに、大きなリュックで、今か今かと何時間も前からスタンバイ。
ちょうどお昼前、職員が、
「ゆらちゃん、行こうか!」
と声をかけてもらうとともに、颯爽と玄関まで降りていく。
歩いて、お店に向かう。
その時の足取りと言えば、軽く、空も飛べるほどだ。
そして、いつもなら話さないことまでも、けっこう話すから不思議だ。
お店に着いたら、ちょうど予約時間に間に合い、店内は家族連れなどで賑わってはいたが、すんなり入れた。
タッチパネルで、メニューを選ぶのが好きだった。
とはいえ、小学生の私が注文するものは、たまご、たまご、ハンバーグののったお寿司、スイーツで終わるのだが、食べるスピードが遅いため、1時間はかかる。
それでも、職員との話は尽きず、美味しく楽しく頂けた。
帰り道もよく話した。
気分もいい。
施設に帰ったら宿題をしようと、やる気もでてくるから不思議なものだ。
施設に帰ったら、同じ部屋のお姉さんに、
「もう、それ三回目!」
って言われるほど、回転寿司に行ったあれこれを話してしまう。
そして、お風呂の時間になるころに、現実に戻る感覚がある。
晩御飯はとんかつだった。
食べて、部屋に戻ったら、お姉さんはアルバイトに出ていた。
もう一人は何か音楽を聴いているのか、イヤホンをしている。
明日の学校の準備をして、歯磨きもした。
興奮状態だったお昼間とは裏腹に夜になると、どっと疲れがでてきて、べあとともに早めに眠りについた。
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