第14話 晴れのち晴れ。

カーテン越しにも感じられるほど、お日様はさんさんと私を照らそうとしてくれる。

こんな日は洗濯に限る。

そうだ、布団も干そう。

そして、べあもお風呂だね、と、幼少期から大切にしているくまのぬいぐるみを手にしてなでる。

お風呂と言っても私が手洗いをして陰干しをする。

べあは、何度も手術という名の補正をしている。

目が取れた時は、べあが死んだとなきわめいたものだ。

べあの目は何度も手術を施し、いまでは茶色のボタンがべあの目になってくれている。

私が小学校の頃来ていたワンピースのボタンだ。

汚れてしまって、お下がりにならない服は当然施設でも処分だけど、その時、職員がボタンや汚れてない部分をとって、小さなポーチをミシンで作ってくれたりした。

そんなこんなでべあの目はちゃんとそこにある。

ベア自体がベージュなので、少しよごれたり、毛羽だったりもする。

だから、くしで毛をといてあげたり、日向ぼっこをすると、ダニがいなくなるからべあが快適に過ごせると言われたことも守っている。

一回目の洗濯。

色分けをしてきちんとのりづけしたいものもある。

今日は外出するよりも家事をするほうがカラダ的にもらくちんだなと思った。

洗濯中に、布団を干す。

そして、布団を干している間に、お風呂の掃除をした。

お風呂の掃除のあとに、べあを洗面器につけて、ゆっくり水をしみこませ、一度お湯をかえて。

そして、また、洗面器にべあをつけて。

何度か繰り返して、しばらくべあにはお風呂を堪能してもらう。

洗濯物は部屋干しをする。

虫が付いたら嫌なのもあるし、帰宅時間がおそくなるととりこめないからだ。

天井の高い部屋に住んでいるからこそできるんだけど。

一回目のお洗濯が終わり、二回目。

干してるお布団を裏返す。

枕のカバー、シーツも洗濯してほしている。

何故か、気分がいい。

二回目の洗濯をしている時に、べあをかるくしぼって、泡立てた洗顔せっけんでべあをなでるように洗う。

そして、しっかり泡を落としてから、

「べあ、ちょっと痛いけど我慢してね。」

と言いながら少し力をいれてべあを絞る。

べあに話しかけるのは、もう物心ついたときからのことだから、本当に、自分の分身かのように、扱う。

二回目の洗濯が終わり、干し終えたころには、午後になっていた。

お腹すいたな・・・。

冷蔵庫をのぞき込む。

買いだめやストックということをあまりしない性格だから、スカスカな冷蔵庫。

そうだ、パスタにしよう。

冷凍庫にある、チンするだけでいいパスタの存在を思い出し、レンジにお願いする。

そして、お湯を沸かし、最近気に入っている、アールグレイを淹れる。

一人でも、

「いただきます」

「ごちそうさま」

は言う。

それなりにおいしかった。

私はトマトベースが好きだから、チーズもかかせないが、今日はチーズが残念ながらなかったのでトマトを存分に味わうかのように食べた。

食べるのは本当に遅い。

1時間くらい経った頃、キッチンにお皿をつけにいった時、

ちょっと雲行きの怪しい空に気づいた。


お布団を部屋に入れて、ほこりをとり、掃除機をかけたへやで、早くも乾いてくれたシーツをセット。


一番お日様が当たるであろう場所にべあをひなたぼっこさせていたが、部屋の中だから、しばらく雲行きを見届けてもらうことにした。


そして、夕方にはスーパーに買い出しに行って、結局その日の晩御飯は作る気にならず、テイクアウトをし、乾いてくれたべあと、降り出した雨の音をかきけすように、音楽をかけ、ゆったり読書をした。


私はこんな一日ですら、とても貴重な一日であり、楽しいのである。

生きているのである。


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