第8話 じゆうふじゆう。

お昼休み。

この時間は本当に曖昧だと思う。

自由なんだけれど、なんとも飛び出せない、なんだか残念な時間。

自由に過ごしていいのだけれど、不自由を感じる時間。

私には会社勤めは合ってないのかもしれないなと、何度も思う。


太陽が一番暖かくしてくれる時間に甘んじて、公園のベンチに座り、お弁当の蓋を開ける。

朝起きたところからのことが蘇りながら、お弁当のそれ、独特の香りにお腹がなる。

一人だけれど、手を合わせていただきますと言って食べる。

そう言えば、私は食事にとても時間がかかる。

今、もう何年も一緒にいるのに慣れてくれない人がいる。

とは言え、慣れる慣れないではなく、待つことに対しての手持ち無沙汰感なのだろう。

「ゆっくり食べろよ」

うーーーん、ゆっくりでもなく、普通なのだけれど、彼はいつもそういう。

私と外食したときなんかは、いつも言う。

彼が食べ終わる頃には、まだ、私はメインに手をつけていない。

運ばれてきたときはあつあつなのに、すでに冷めてしまっていることが多いのである。

でも、それも、私にとっての普通であり。

早くしなくちゃと思われるであろう、彼の気遣いなのだけど・・・。

それとは裏腹に、早くしてくんないかなぁ・・・が隠れてたらどうしようと思っていた時期もあった。

でも、そんな不安は半年もしないうちに解消されるのである。

私が食べ終わると、タバコの煙を燻らしながら、

「おいしかったね」

と、声をかけてくれる。

そんな、包み込まれるような言葉をいつもいつもかけてほしいのである。

両親がいなかった私にとっては祐也、彼氏の存在は毎日を重ねていくうちに大切な、尊い存在となる。


祐也は今頃、会社の人と、定食屋さんでもりもりとご飯を食べているだろうな。

そんなことを考えながら、お弁当が空っぽになるまで頬を揺らす。


だいたい食事には1時間くらいかかるのだが、社会人になる少し前に、ちょっと早くなった。

だいたい、45分。


会社の休み時間はお昼休みは1時間。

移動と食べる、で終わってしまう。

そんなつかの間のお昼休みに、大切な彼にメールをする。


「今食べ終わったよ!」


これが、お昼の挨拶になっている。


返事を見る頃は15時の小休憩のときだ。

小休憩は祐也の返事が一番楽しみなのである。


早く小休憩にならないかな・・・と思いながら

午後からの仕事にとりかかるのである。

何度も腕時計を見ながら・・・。




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