第7話 星空のむこう

『明日からなにしよう・・・』

小学校の頃の夏休みが始まる前の終業式の最中、校長先生が話してることなどなんの興味もなく、ただただ明日からどう過ごそうか、そればかりを考えていた。


クラスの友達は家族で旅行だとか、ママの田舎に帰るだとか、プールにいくだとか、海に行くだとか・・・。


こんな暑い中、家族でなにをしたら楽しいのかがわからなかった。

少し羨ましいという気持ちもありつつ、自分はどう過ごそうかと考える。

そう言えば、山のような夏休みの宿題があった。

自由研究はなににしようかな、とか、書道の宿題もあった。

そして、画用紙に風景画を描く宿題。

これらをこなせば、夏休みなんてすぐに終わるだろうと思っていたが、毎年、夏休みの前半で全てやり尽くすという、優等生ぶり。


夏休みは、養護施設の仲間たちも自分の親元に帰っている人もいたし、面会にくる人もいる。


もちろん私にはそんなものはない。

だからといって、里親の希望は出していない。

比較的、3人同室となっている自分の部屋は夏休みになると、一人部屋になることが多い。

後のふたりは中学生と、一つ学年が上の人。

女子は女子同士、男子は男子同士の部屋になるのが決まりだ。


よく、読み終えた漫画を借りては読んでいた。

夜ふかしも怒られるのだけれど、よく、隠れて遅くまで起きては、昼間に隠しておいたお菓子を食べていた。


なんの予定もない子供たちには養護施設の行事ごととして、

キャンプに連れてもらった。

川遊びをしたり、魚を釣って焼いて食べたり、飯盒でお米を炊いたり、それなりに楽しく過ごしていた。

バーベキューなんかは非日常を味わえた。

肉ではなく、ウインナーや焼きそばを選んでいたのを思い出す。

星をゆっくり眺めたり、自然の風を感じながら多少蚊に噛まれることはあったにしろ楽しんだ。

満点の星空の向こうの宇宙を感じながらテントの中で怖い話をして、寝袋で眠った。


そのときだけは本当に私にとっての夏休みだった気がする。



そして、新学期が始まるまでテレビを見たり、職員の料理を手伝ったりして過ごした。

長いようで短い夏休みが毎年くりかえされるのである。







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