第6話 普通の定義

けたたましく私を目覚めさせようと、あちらこちらでいろんなメロディが流れてくる。

じりりりり、そして私の好きな曲、タイマーセットしていたテレビ。

それらが鳴り響く、この6帖1kの部屋で、ベッドから出れずにいる。

朝はもともと弱いのだ。

6時には起きて支度をする。

その為には早く眠りにつきたいのだが、ここ何日かの不摂生で、めっきり朝が起きれなくなってしまった。


温かい布団の中で、ごそごそもがいて、決死の覚悟で体を起こす。


そして、一番に体のデトックス。

白湯を沸かしながら、朝ごはんの準備をしつつ、お昼ご飯のお弁当を準備する。


お弁当はやはりひとり暮らしにとっては、欠かせないものだと思っている。栄養うんぬんではなく、私の経済状況としてはお弁当持参、水筒持参はもはや標準。


でも、同僚は実家暮らしで、お昼になればどこかしら洒落たお店を見つけては、

『あのお店のメニューはさすがよ、コスパ最強!』

なんて騒いでたりするけれど、コスパ最強なのは自作のお弁当だと思う。

思うに、普通、とか、標準、というのはなんなんだろう。

平均とはまた違うものであって。

毎日お昼休みはランチ廻りをしているのも一つの普通になるだろうし、毎日お弁当持参している私もそれが普通、普通っていう言葉は都合もいいし、使い勝手がいい。


などと考えながらも着々とお弁当はできあがる。

昨夜の残り物に、卵焼き。

白米にはふりかけをかけて。

機嫌のいい日はプチトマトや、季節のフルーツを入れて持っていく。


そして、朝ごはんは納豆と、味噌汁。

これも私にとっては普通。というより、ルーティーン。


出社は必ず、15分前には自分のデスクに座っている。

職場の掃除なども率先して雑巾がけをしたりもする。

以前は30分前にきて、雑巾がけや、コピー機の電源を入れたり、できることは全てしていた。

この、以前との15分の差とは、化粧を覚えたからだ。

以前は日焼けどめに、少し色のつく程度の口紅で終わらせていたのだが、親友の望美から、

『もう少し、顔に色がないと・・・』

と言われ、望美についてきてもらって、化粧品を購入した。

その化粧品はもうひとつの私、つまり、外に出た時の、

『藤本結良』

になるのだ。


だとしたら、家でくつろいでいるときはただのゆら。


望美がお化粧を教えてくれてから、素敵な彼氏もできたし。

それはそれでいいのだけれど・・・。


その化粧が会社に出社する際の、普通になるのに時間がかかった。

抵抗ではなく、ルーティーンの中に入るのに時間がかかった。

それまでの私は日焼けどめに口紅が普通だったのだから。


普通の定義は結局主観である、私にあるのかななんて自己解決させて、戸締りをして玄関を出て、鍵をかけ、駅に向かう。

私の普通。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る