第4話 運命のヒトとは。
私には小さい頃の記憶にお父さんやお母さんがいない。
それは、それ自体が「普通」だった。
小学校に上がるころには、参観日があり、私には職員と呼ばれる大人、とは言っても、あだ名で呼びあっている、いつも自分の世話を焼いてくれる人が来てくれる。
少し照れくさかったけれど、その時は自分が発表する番がくると、いつもよりも更に緊張していたことを思い出す。
その緊張はいい緊張だ。
しかしながら、今のこの緊張はいい緊張感ではない。
どちらかというと、体調が悪くなるほどの緊張感。
そう、同じ職場の先輩から、合コンに誘われた。
先輩の友達、私の友達、それぞれ一人ずつ連れてきて、女性4人男性4人の合コンだ。
なぜか、集合場所のカジュアルでおしゃれなお店に2番目に到着してしまった。
予約の名前を店員さんに告げて案内されるがままに進んでいくと、既に、10分前行動実行者である私と同じタイミングだったのか、席に着いたばかりの男性が端っこに座り、こちらを見て、会釈。
4人ずつ椅子にかけられるテーブルで、離れて座るのも変だし、かといって、まさか、隣に座るわけにもいかず・・・。
向かい側に鎮座した。
こういう時、どんなことを話せばいいのか、どんな風にふるまったらいいのかなんて、上品に育っていなかった私には全くわからず、むしろ、頭が真っ白な状態で、静かに流れるジャズを楽しむふりをしながら、唾を飲み込んだ。
その音ですら聞こえてしまっては恥ずかしいと思うほどに緊張していた。
視線は落としたまんま。首までも曲がってしまいそうなほどだ。
「早く着きすぎましたね」
開口一番は、向かいに座る男性だった。
私は、
「そうですね、まだかなぁ」
と、店内を見渡したりしながら、いきなり話しかけられたことにびっくりしてしまっていることを隠す。
この沈黙、余計に緊張してしまうから、何か話そうか、それとも、飲み物を注文するか聞こうか・・・。
「あの、こういうのって、俺、慣れてないんで、その・・・」
この時、向かい側に座る男性の顔を初めてまともに見た。
慣れてない者同士、この空間をどう操作したらいいのか・・・。
なんて考えてる間に、
「私もなんですよ、早めに着きすぎちゃったのかな」
などと、勝手に口から言葉が漏れたりする。
少し、お店にも人が入りだし、心なしかにぎやかになってきだしたころ。
「ごめーーーん!もう着いてたんだ、けっこう待ったでしょ?」
けっこうな勢いで先輩と、先輩の友達が到着した。
一通りの挨拶をすませ、私の友達は仕事が終わり次第駆けつけることを伝えた。
その直後に男性陣が揃った。
向かい合って座って、「ざ・合コン」が始まった。
飲み物を注文し、乾杯をしてからは時計ばかりに視線を落としていた。
遅れてくる友達をいつでも迎え入れて上げられるように、そこそこ興味のない話を少し大げさに相槌して、ただただよくわからないノリとツッコミに、愛想笑いを繰り返していた。
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