第2話 他人行儀

私は物心着いた頃には、たくさんの仲間がいた。

自分よりも随分年上のお兄さんやお姉さんがたくさんいた。

そして、同じ年頃のやんちゃな男の子や泣き虫の女の子がいたり。


一つ言えることは、私とその仲間たちとは一切血の繋がりがない。

仲間たちの間に兄弟や姉妹はいたようだけれど、私には兄弟、姉妹はいない。

でも、そんな他人と、寝食ともにすごしてきたのである。

家族のような、でもどこかでそうではないことも薄々感じていたものだ。


職員は全員にあだ名があり、そのあだ名で、呼び合っていた。


「お母さんが会いに来てくれた!」

と、おおはしゃぎする仲間。

それを見てもなんとも思わなかった・・・といえば嘘だ、大嘘だ。


逢いたくて逢いたくてしかたなかったのだから。


お母さんが会いに来てくれる、なんて、羨ましい。

そして、いつか自分もお母さん、もしくはお父さんが迎えに来てくれると思っていた。


養護施設をでる3年まえぐらいからそんな夢は捨てた。

期待もしなくなった。


高校受験で合格したときは、さすがにお母さん、お父さんに報告したかった。

褒めて欲しかった。

愛情に飢えているといえば、そうなのかもしれない。

愛なんてなくてもできることなんてたくさんあるのに。


家族でスーパーに買い物にきているひとたちを見て、

「うざい、マジでうざい!」

って、叫んで職員にお説教をくらったこともある。

それでも、私はそれをやめなかった中学3年間だった。

将来の夢を聞かれた時に高校受験を真剣に取り組んだけっか、今に至る。


どうして私にはお父さん、お母さんとよばれる家族がいなかったのだろう。


その人たちの存在を知ったのはつい最近のことだった。

今更、それを知ってしまってどうすればいいのだろう。

そう思い、所在が確認できたところで私の「家族」への執着は消えた。

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