第2話
亀はとにかく話をするのが好きなみたいで、一度話始めると止まらなかった。
なんでも、この竜宮城はあの浦島太郎も来ており、他にも歴史で習うような武将なども来たことがあうらしい。
亀はさらに、自分の若い頃の苦労話を長々としだした。三角太郎は話を聞いていると思ったら、舟をこぎはじめ、四角太郎はトイレに行き、丸太郎は話そっちのけで飲み食いしている。
そういうありさまだから、亀の話を聞いて相槌を打っているのは僕ぐらいだ。しかし、亀の話を長々とされても困るので、こっちから話を変えてみた。
「ところで、竜宮城と言えば浦島太郎ですけど、昔話にもなったのには理由があるんですか?帰りに玉手箱をもらって、老人になったんですか?」
「いえいえ、そういうわけじゃないんですけどね。浦島さんは昔この竜宮城で起こった事件を解き明かした人なんですよ」
「へぇ~そうなんですか。それはどんな事件なんですか?」
「窃盗事件です。玉手箱が盗まれたんです」
「あ、玉手箱はあったんですね。開けたら年を取るんですか?」
「いえ、まさか。竜宮城のオーナーの持っていた宝石なんかが入った箱ですよ。それで、事件の流れを説明しますとね…」
「あの~トイレってどこにあるんですか?」
一度部屋を出た三角太郎が話に割り込んできた。
「ああ、初めての人には分かりにくかったですよね。一旦建物を出て左に曲がれば小さな小屋がございます。そこがトイレです」
「あ、どーも」
そそくさと三角太郎が部屋を出ていく。
亀は再び僕の方に向き直り、
「それで、事件の概要なんですが、いつものようにお客さんを招いて竜宮城を開いていたんですけど、その途中でオーナーが乙姫に宝石でもつけてあげようと思い、宝物庫に入ったんですが、開店する前にはあったはずの玉手箱がなくなっていたみたいなんです。
それから、竜宮城の中にいた人たちを集めたんですが、犯人はすでに別の場所に玉手箱を隠していたみたいで、犯人が誰なのかすぐに分かるような状態じゃなかったんです」
「容疑者は何人だったんです?」
「オーナーも含めて二十人です。お客さん十人と従業員十人の」
「その中に浦島太郎がいたと?」
「はい。浦島さんはアリバイも含め犯人ではないということがすぐに分かったんですが、そこからの犯人追及が難しかったんですよね」
「そこで謎解きをしたのが浦島太郎だったんですね」
「はい、そうです。浦島さんは現場にあった折れた箸から犯人を当てたんですよ。」
「そうなんですか。……じゃあ、どうして浦島太郎は玉手箱を開けて老人になった…というような話になったんです?」
「ああ、それは浦島さんが事件解決に三十年以上かかったからですね。事件を解決したのがおじいさんになってからだったので、そういった話になったのかもしれませんね」
「…そうなんですか」
盗難事件の解決に三十年以上かかったとは。普通は途中であきらめそうなものだが。
それからまたいくらか時間が経った後、一人の従業員が慌てて部屋に入ってきて、亀に耳打ちした。
それを聞いた亀は驚いた表情をし、
「みなさん、すいませんが今しばらくこの部屋でお待ちになってください」
と言い残して従業員と一緒に部屋を出ていった。何かあったのだろうか。
さすがに他の三人も不審に思っているようだ。
それからまたしばらくして亀が戻ってきた。そしてなぜか僕だけを部屋から連れ出した。
「な、なんでしょう?」
自分だけ呼び出され、何もしていないのにびくびくしてしまう。
「実は、竜宮城の宝物庫にて従業員の死体が発見されたんです」
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