第43話わたしたちの旅の果てに
そうして最果ての地へと辿り着いたわたしたちは、もはや言葉を交わすこともなく、ただ無言のうちに互いの痛みを感じていた。滅び去った故郷を出て、流浪の果てに行き交う鳥を追ってここまで流れてきたわたしたちに、手を差し伸べるものも、宿を貸すものもなく、幾夜もの野宿を経てきた。その晩にわたしたちは粗末な食材で煮炊きをし、スープを作って飢えをしのいだ。冷えた身体に沁みてゆく命のかけらの最後のかがやきと、そのはかなさを語り合いながら、時に笛を奏で、わたしたちは眠った。わたしたちの体を包む旅装は時間を経るうちにくたびれて、それを不器用な手つきで繕いながら、そうして歩んできた旅路だけがわたしたちの生の証なのだった。それもじきに終わる。わたしたちは星を見上げて語らい、最後におやすみと告げて眠りについた。人影が迫り、荷物は掠奪され、煮炊きをした鍋も、わずかな路銀も、わたしたちがたましいの結合として存在するための宝玉を残して、すべては奪われ去った。わたしたちは裸身のまま、宝玉を手に歩み出す。あの星のもとで、わたしたちはわたしとあなたに分たれる。呪いの旅も終わりを迎えようとしている。輝く閃光を放って星々が堕ちてゆく。わたしたちはそれを見上げながら、故郷の歌をしずかに口ずさむ。奪われてなお奪えなかったもの。宝玉を手に、わたしたちは指を絡め、そして、降ってきた星明かりに包まれて生まれる。あなたの名前をようやく呼んで、わたしはわたしになる。
BGM:Ichiko Aoba - Luciférine
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