第5話告解

愛していたなんて欺瞞で、この罪も自己愛という名の欺瞞で、あなたの手紙を眺めることでこの罪を贖おうとするけれども、文字のひとつひとつに触れるか触れないかのところでそっと手を引っこめて、記されない言葉のつづきを追っていたら夜が更けてゆく。手紙には書かれない言葉を今もあなたは発しつづけているのに、私にその声は届かない。あなたの姿は目に見えない。見えないということが信仰となりうるのか、あるいは私たちの記憶がさらなる闇の奥へと遠ざかってゆくはじめの兆しとなるのか、神話学をどんなに学んでも答えは出ない。かつて呼び合っていた他愛のないふたつの名前を祈るように唱えてみる。まったく莫迦げていて、いとおしかった名前は、それきり誰も呼ばなくなって、この夜の果てにあるという地獄の鍋の中で数多の桃と一緒にぐつぐつ煮えている。コンポートになって、ちょうどいい温度になったら器によそって食べることにして、私の痩せぎすの体を満たすまで待とうか。おつまみになるように塩とチーズも加えてモッツァレラにしようよ。私の罪が体の中で膨張して、私を破裂させるまで、手紙の文字列を暗記できるまで読み返して、朝なんてこなければいいと願う。あなたが無垢であればあるほど私の愚かさは浮き彫りになって、あなたの涙の形が真っ白な兎や、羽をもがれた蝶であることを思い出して、誰も救いにこない夜の底でひとり膝を抱えて、すべてが嘘であればいいのにと思う。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。好きでした。

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