第3話

「手を挙げなさい、手を挙げるの!」   ミチルは仕方なく嫌そうに腕を少しだけ挙げた。                  「ちゃんとに手を挙げなさい。」     又、千代が力強く命令してくる。     ミチルは観念して、渋々手を挙げた。だが、誰が見てもそれは仕無くなくやらされた、そして本人は嫌嫌服従しているのは見え見えだ。                  大人達は皆黙って複雑な顔をしてミチルを見る。                  子供達は又当たり前の様にケーキを食べ始めている。誰もミチルの事など気にしていない。                  「何であんた、手を挙げなかったの?駄目じゃないの?!」             千代が叱りつける。          「あんた、ママが可哀想だと思わないの??」                 もっともらしく言う。          「ねー、あんた何で返事しないの?!」  又始まった。ミチルとその母と同居している千代はいつもミチルを叱りつける。    それはいつも些細な事から始まり、中々終わらない。一、二時間位は普通だ。もっと長い時もある。               千代にとってはストレス発散だし、面白いのだ。一種の暇つぶしでもある。      「まぁまぁ、そんなに怒らないでさ〜?」 母の妹で、ミチルの叔母が言った。    「だって、あんた!」          「この子だって、何か理由があって手を挙げなかったんでしょう?」         凄く嬉しそうだ。自分の娘二人は嬉々として手を挙げたのだから。          「だって手を挙げないのに、無理矢理に挙げさせてんだもん!!」          そう言って笑っている。         「自分の母親なのに!なのに嫌がってるのに、無理矢理に手を挙げさせたんだから!」又嬉しそうに笑う。           「だったら、何か理由があるんでしょう?聞いてみたら良いジャン。」         千代がミチルを見る。

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