第7話 ニビル着陸
さっきと比べてかなり減速した。
「やっとここまで来たな」
「ああ、じゃあ人工衛星飛ばすぜ」
キースは小型の人工衛星が大量に入っている宇宙船後方の部位へと近づき、何重にもかけられた安全ロックを解除し、最後のスイッチを押した。
30秒に200個ほどのペースで散りばめていく。
この何千何万の人工衛星が、星の住人を監視し、抵抗する可能性の火種を探し出すための超高性能カメラが搭載されている。
そして、惑星ニビルの周りを回っていた宇宙船のもともとの慣性で、それぞれが軌道に乗って安定する。
このあたりの高度が重力と遠心力が釣り合う大地との距離だ。
正直、俺はこの侵略にはあまり気が進まない。
星を再生不能になるまで使い倒し、ろくに対策もしなかったから大気が汚れ、資源が枯渇した。
こんな有様になったのはすべて地球人のせいだ。
惑星ニビルに罪はない。
攻めて原住民を滅ぼしたところで、かつての緑あふれる地球がそのまま帰ってくることはない。
壊してしまったものは、全く同じものは2度と手に入れられない。
しかし、軍人という身分上、国に逆らえはしない。
「じゃあ、降下するからな」
「ま、待てよローマー! 俺まだ座ってねえよ!」
俺が操縦ハンドルを前に全倒しする。
それに連動して宇宙船は真下に方向を変えて急降下する。
大気圏に突入して窓の外が鮮やかな赤で染まる。
もちろん耐熱性能は国の最新の技術が使われているのでこの程度なんの問題もない。
そしてこの向きのまま突っ込もうと思っている。
理由は簡単なことだ。
ここ周辺に超巨大なクレーターができればこの星の観測者達が一帯にいたときはまとめて吹っ飛ばせる。
すぐに別の人間が来るかもしれないが構わない。
攻撃をしてくればそこからやつらがどんな戦法で戦ってくるか、どの程度まで文明が進んでいるか知ることができる。
もちろん俺達の宇宙船に問題はない。
前の戦争でその強度を実感した出来事があった。
どんどん緑の地面が近づいてくる。
地球のなかで戦争が起きたときと似ている。
緑溢れた地域をいきなり戦場にして乗り込んで、原住民達を無慈悲に抹殺していった。
戦いは激化し、植物は渇れ果て、無機質な灰色と鉄が錆びた赤色だけが残った。
それといまこの景色を重ねて【悲しさ】という感情が浮かんだ俺は軍人には向いていないのだろうか。
この体が機械でなければ、大昔の人のように目に微量の水が浮かんできたことだろう。
今だけはその感覚が少しだけ分かった。
突然目の前から4本の鉛の塊が飛んできた。
恐らくミサイルの類いだ。
「うおおっ!」
隣でキースが声を漏らす。
俺はすぐさま方向転換した。
さすがにこの速度に爆発物がつんであるであろうミサイルと衝突するのは危険だからだ。
ギリギリのタイミングで右にハンドルを切ってうまくかわす。
キースも俺が信頼を置いているだけあってものすごい反射神経だ。
冷静になって迎撃用の小型ミサイルをこの宇宙船から発射してくれた。
それらはぶつかり合って相殺し、すさまじい爆風を巻き上げ、爆風を響かせた。煌々とした光が視界の隅に映る。
なんやかんやで結局地面と平行になって穏やかに降りる形になったのでそこに身を任せる。(穏やかといっても木々を数百本倒していったのだが)
地面を削って降り立ち、完全に停止したところでドアを開けた。
パラパラパラ…………
宇宙船がまとう焼けた砂が落ちる。
「ふう、なんとかなったな」
「おう! ここまで順調だ!」
「いや、そうとも言えないぞ。さっきミサイルを撃ってきた輩は、要は俺らの存在に気が付いて撃ち落とそうとしたんだ」
「まあ大丈夫だろ、適当にこの辺のやつぶっ殺せば」
「むやみに殺そうとすんじゃねえよ。どうやらこの辺は田舎らしい。回りが森しかないからな。宇宙から見たときは、夜でも明るかった都会っぽいところがいくつもあった。その辺の情報をもらうためにも必要だからな」
「ふうん。なるほど。じゃあさっき撃ってきたやつを探そうぜ」
「そうだな」
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