第2話 新発明
時は3XX年。
街の至るところがネットワークで繋がっていて、人々が不便だと感じる外はほとんど無いが、彼らはもう急激な発展をやめて、研究者たちはさらなる星の軍事的発展よりも発明に身を投じることに重きを置き、人々を楽しませ、また、自分も楽しんでいた。
人々の命は決して永遠ではないが、みな限られた人生を手を取り合い、健康的に、とても楽しんでいて、まさに
完全な統一を果たしたその星は、大きな争いというものが特にないので、大した格差がなく、そして環境問題を完全に克服していた。
それを克服した星は更に大きな発展をするということが最近、シュミュレーションで明らかになった。
今日もまた、一人の科学者が発明を完成させていた。
「僕が作ったのは…ジャジャン!夢見れる扉!」
「なんとこれは、その人が求めているものが、パラレルワールドを介して得られるという素晴らしい扉!」
「「「ワー!」」」
「「「オー!」」」
「「「フー!」」」
人々の黄色い歓声が会場を包み込み、当の本人も自慢げだ。
「ほとんどのものが得られる現代、どのような実用性があるのでしょうか」
客席の隅の方から1つの質問が響いた。
他の者たちも、発明者の答えを聞くべく耳を傾ける。
「確かに物質的なものを求めるにはわざわざこの扉を使うのはナンセンスです。しかし、我々人類は、未だかつてタイムマシーンというものを完成させていません」
男が言うように、これほどまでに発展していても、時空を操る機械を完成させたという報告はどの地域でも無い。
そして男は続ける。
「さきほど僕はパラレルワールドを介してと言いました。」
人々が疑問の表情を浮かべる。
だが男はこう続けた。
「つまり、ある一定の時間からもう一つの平行世界を作り出し、それからその世界で時間を過ごせば、自分の過去にかなえられなかった望みを果たすことができるのです!」
人々の顔が少しばかり曇る。
「それはつまり、時を
先の者が質問をする。
「そゆこと」
その科学者が放った言葉を皮切りに、まるでダムが決壊したかのように歓声が沸き起こった。
取材に来ていたメディア陣も、こぞってこれを報道する。
「今、なんと歴史上初、タイムマシンが完成しました!御覧の通り、人々は歓喜の声を上げています!」
「え!?うそ、まじで?」
その報道を、ARディスプレイを頭部に装着して、ショッピング、ゲーム、映画などのインターネット利用者が、即座に舞い込んできたニュースを見て、驚嘆の声を上げる。
なぜなら、歴史上もっとも偉大な発明、かもしれないから。
「ステラさん、発明の経緯を詳しく…「ステラさん!この発想はどのようにして…「詳しい使用方法など…「学生の頃はどのような成績で…
などと記者がなだれ込み、次から次へと質問攻めにあう。
「皆さん、落ち着いてください。」
叫んだわけではないが、高性能マイクによって発明者の声が会場によく通る。
「ひとつ、勘違いをされているのではないですか?」
会場が静まり返り、人々の表情が再び曇る。
大した度胸で、男は続ける。
「パラレルワールドに行って、自分の行動を変える。そこまでは理解していますよね?」
大衆が無言で頷く。
「もしパラレルワールドに行くならば、【バタフライエフェクト】と言って、今に至るまで全く同じ動きをしないと全く同じこの世界にはたどり着きません。もちろん、過去と全く同じ動きをしろ、と言ってもできませんよね。まあできる人はいいですけど。そして行った後、そのパラレルワールドにこの扉はあると思いますか?未来からの訪問者が来て、いろいろと不具合が起きるであろうその世界に?」
想像していたのか、人々の顔に恐怖の色が出る。
「運良く、もしかしたらその世界にもあるかもしれません。しかし、平行世界というのはこの世界ともう一つの世界、というわけではなく、分岐点は、それこそ無限にあります。その扉を使い、この世界に戻れる確率は途方もなく低いと私は考えます」
このあと、小さい暴動がおこった。
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