第25話 第八章3
日が傾いてきて、バーベキューはお開きになり、江無田が炭コンロの片付けをし、女子三人は洗い物と周辺のゴミ拾いを行う事になった。由香里と恵が「じゃ、私たちは洗い場に行って来るね」と言って、背を向けた。
今日、初めて、なるみは江無田と二人きりになった。彼に対して、後ろめたい事は何もないはずだが、打ち解けた感じで話すような気持ちでもなく、なるみは無言で淡々と片付けをしている。無我夢中で作業をしている中、突如、江無田から「なぁ。おい」と声を掛けられて、なるみは反射的に肩をピクッと動かした。
「何、過剰反応しているの?」
江無田が鼻で笑う。
「べっ、別に…………。ただ、純粋に驚いただけだよ」
なるみは目を泳がせながら答えた。
江無田は無表情で「あ、そう」と言うと、視線を下に落とし、両手を動かす。「もしも、違っていたら悪いんだけど、さ」
「うん」
「川島って、最近、なんかあっただろう?」
————いきなり、直球のストレートでくるのか。
なるみは、一瞬、身を固くしたが、声のトーンに気を付けながら「どうして?」と聞き返す。
江無田は「そんなもん、今日一日、川島の様子が変だったからに決まっているだろう?」と、ぶっきらぼうに言う。「木下と佐藤だって、川島になんかあったんじゃないかって思っているよ。二人のあの様子だとね」
————たぶん、きっとね。
「そうだね…………」
江無田は両足に力を入れ、腰を低くすると、なるみを直視してきた。「まぁ、無理して話す必要も、俺から聞き出す必要もねぇけど、さ」
なるみも無意識に彼を見ている。
「もしも、川島が何かに悩んでいて、それでも、あいつらに相談出来ないのなら…………」
「うん」
「その時は、俺に話してくれ」
江無田の目は真剣そのものだった。
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