第6話 第二章 2

 なるみは同窓会に向け、休日を利用し、大型のショッピングモールに出かけ、流行の服や装身具をチェックしたり、奮発してエステティックサロンに通ってみたりして自分を磨く事にした。知人の結婚式などに招待された時などを除き、彼女が自身の為に出費を厭わないのは、珍しい事だ。それは、同窓会で同級生と再会した時、自分を見た、かつての仲間からどう思われるのかを危惧するからではなく、その場に同席するであろう吉田先生に美しいと思われたいという欲情からだった。

 ――――本当に吉田先生は同窓会に来るのだろうか、なるみは不意に不安に思う時がある。高校を卒業し、十二年。その間に親しかった友人たちと集まり、共に食事を取りながら近況の報告をしあう程度の会を開き、それに参加した事なら何度もあった。けれども、母校が主催する正式な集会に出向くのは、教師という職業に付いている人生の先輩たちに自分が立派な大人に成長しているのか採点を受けに行くようで緊張感を抱かずにはいられない。

 開校五十周年記念を祝う場として設けられた今回の同窓会。母校の節目に自分が立ち会える事など、奇跡に近いかもしれない。

 不安と期待が混じり合う気持ちは、なるみの心を知らず知らずのうちに“あの頃”に戻していた。


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