第4話 第一章 3

 給湯器の音が遮り、なるみは意識を現実に戻した。服を脱ぎ、浴室に入室し、熱いお湯を身体にゆっくりとかけ、髪を洗い終えた後、ボディーソープで全身を入念に洗っていく。

 なるみは指を滑らせるように湿った下半身に動かし、やがて柔らかい場所を探り当て、同時に余った手で乳房に刺激を与えていく。その先端は、もうすでに固くなり始めていた。

 ある人物を思い浮かべる。黒髪で短髪、一重で切れ長の目、薄い唇…………。

誰もいない静まり返った放課後の教室で、彼は、なるみを抱き寄せると唇を這わせながら、制服を脱がせ、机の上に仰向けに寝かし、彼女の中に挿入すると、間もなく、ゆっくりと動き始める。

高校生のなるみは艶やかな声が漏れてしまわぬように両手で口を押さえながら、それに合わせていく。

次第に彼の動きが激しさを増す。

自然に、現実のなるみの指の振動も勢いがついていく。

想像の中の彼が達した瞬間、なるみは、吉田よしだ先生――――! と叫びながら最高潮を迎えた。

 なるみは痺れた下半身を構うようにベージュでタイル張りの床に座り込む。息は荒く、鼓動は耳の奥から聞こえてくる。身体の痺れが治まるのを待ち、なるみは浴槽に浸かった。

 天井まで昇っていく蒸気を見つめながら、また自らを犯してしまった、と強い後悔の念を抱く。いつだって、そうだ。快楽を得た後の罪悪感は想像以上に大きなものだ。だが、躰は異性から受ける愛撫では、もう満足出来なくなっている事を彼女自身が一番分かっている。

 ――――私は今でも吉田先生の事が好きなのか…………、自問自答をしてみる。

――――あの頃から、もう十数年も経っているというのに。

――――高校を卒業した後、終わりを告げたが確かに恋愛もしてきたというのに。

否定的な考えを巡らせてみたところで、彼女の全身がその答えを教えていた。

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