第四話『初クエストは粘液に埋もれる』
さて、少し不安気のあるパーティを設立し、近くの安い宿を借りて、宿の二階の一室でレンタとフランデリは次に何をすべきか話し合っていた。
宿の一室は丸テーブルが一つとベッドが二つと棚が一つ置かれた質素な部屋だった。
一階は一人用、二階は二人用の部屋がそれぞれ九つ設置されている。
風呂や食堂は一階に設置されていて、食堂のオススメメニューはカツ定食である。
レンタとフランデリは二階の一室の丸テーブルの周りの椅子に腰を下ろしている。
「それはあれだろう。衣食住だ。この三つがあれば生活は成り立つ。」
フランデリが三本指を立てながら当たり前の様に言うと、レンタは一本指を立ててその考えに一つの要素を付け加えた。
「違うね、フランデリ君。衣食住と…金だ!生活するには金が居る!」
レンタがそう言い放つとフランデリが「金だと?」と聞き返した。
「ああ、そうだ。衣服を買うのにも食べ物を食うのにも部屋を借りるのにも金が居る。それが無かったらば、ガリガリ全裸のホームレスになってしまうのだよ。」
途中から口調が叔父様になっているがそこは気にしないようにしよう。
「うぇ〜…それは嫌だな。」
フランデリが「ガリガリ全裸のホームレス」になった自分を思い出して、苦い顔を浮かべる。
「そんなあられも無い姿をレンタに見られるのはちょっと…。」
「今突っ込むとこそこじゃ無くね?」
フランデリがそう言いながら両手で身体を抱いて身を捩らせたので、レンタは色々突っ込みたい所を慎重に選んで(数秒間だが)、そう言った。
「しかし今は金に余裕があるだろう?今もこうして宿借りられてるし。」
「今はな。だけどきっとすぐ金は無くなる。その為に何をしたら良いと思う?」
レンタが聞くとフランデリが、ふむ、と考えてこう答えた。
「そういえばどっかの屋敷の改築工事があるそうだぞ。」
「真面目に考えた結論がそれか。クエストだよ、クエスト。ギルドの掲示板にクエストのチラシが貼ってあっただろ。そこから割に合った仕事を選んでこなすんだ。」
レンタがそう言うとフランデリは手をポンと叩いて納得した。
「なるほどな、クエストか!やはりレンタは考える事が違うな。」
「というか、何故肉体労働の提案が最初に出てきたのが気になるのだが。」
「そこはほら…気にしないでくれ。」
フランデリが目を反らし、恥ずかしそうにそう言った。
「まぁ良いや。じゃあギルドに向かおう。」
こうしてレンタとフランデリはクエストを探す為にギルドへと向かった。
ーー冒険者ギルドーー
「お、これが良いんじゃないか。」
冒険者ギルドの掲示板に立ったレンタとフランデリはクエスト用紙を一通り見た後、一つのクエストに絞り込んだ。
レンタが指差したクエスト用紙をフランデリも見やる。
「クエスト内容はグリーンスライム五体討伐、報酬は銅金貨15枚…ね。何か地味じゃない?」
「見た最初の感想がそれか。別に地味で良いんだよ。いきなり派手なクエストやっていきなり死んだらたまった物じゃないだろう。」
レンタがそう言うと、フランデリは少し気を落としたが遂には納得した。
「まぁ確かにグリーンスライムの粘液は精神的攻撃や緑を枯らす効果があるから、パパっと倒す必要もあるにはあるのよね。」
レンタは頷くと、その討伐依頼用紙を引っ剥がし近くの草原へと向かった。
ーー草原にてーー
雲一つ無い青空の下。
一匹目のグリーンスライムのステータスを確認する。
[Name:グリーンスライム 討伐レベル2〜3
HP:11 MP:4
物理攻撃力:7 特殊攻撃力:3
物理防御力:6 特殊防御力:4 素早さ:5
<スキル>
体当たり《ボディブロウ》、
「…粘液とか液体化とかちょっと如何がわしいな。なぁ、フランデリ。」
青いパネルに記されたグリーンスライムのステータスを見た後、レンタがフランデリを見ながら言う。
「何で私に言うんだ。さっさと倒して金を毟り取りましょう。」
「毟り取るっていう言い方やめろよ。まぁ確かにパパっと倒した方が良いよな。」
まずは手始めに、石の
するとグリーンスライムが
液体化によって素早く交わされるのと同時に見えないくらいに早く近づいてくるのが分かる。
「レンタ、ここは私がやるから下がっていろ。選地の
片手剣の剣先を地面に思い切り突き立て、魔力を注ぎ込み、剣を象った地岩を突き出す。
しかしスライムはそれを上手く交わしフランデリの目の前に現れる。
そして身体から
粘液はフランデリの頭の上から掛けられる形になり彼女の鎧がベトベトになる。
銀髪の長髪が艶掛かり、より綺麗になったが残念なのは、その粘液が臭い事だ。
何の臭みであるのかは知りたくはあるが自ら調べてみたい内容ではない。
これらの理由から、
フランデリもまた例外では無く、粘液を掛けられた時点で戦闘の意思が薄れて来ている。
「…いや、待て待て待て。フランデリお前、随分格好良い啖呵切ったわりに何もしてなくね?」
「だって…だってぇ。こんな粘液付けられたら戦意失うの仕方ないじゃん…。」
「フランデリお前、そんな事感じるくらい女っぽいのな。」
「っぽい、じゃなくて女だから。それと今の発言、地味に酷くない⁉」
フランデリの反論を聞き流しつつ、レンタは
すると液体は散り散りになりようやくグリーンスライムを一体討伐した。
「あ、それ使えるなら私の攻撃意味無かったんじゃない?」
「そうだな。素早く散り散りに出来る以外は邪魔そのものだった。」
レンタが口厳しく本音を吐くとフランデリは膝から地面に崩れ落ち突っ伏した。
「っ…地味に酷くない、その言い方…。誰よ、私に攻撃しろって言ったのは」
「自分だろ」
フランデリはレンタに慰められるまで四つん這いの態勢で泣き喚いていた。
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