オレンジダイヤモンド
そして、すぐにヴェリテはフルールの元に帰ってきました。
ヴェリテはオレンジ色の宝石をふたつくちばしにはさんでいました。
フルールはヴェリテから、オレンジダイヤモンドを受け取りました。
「フィエリテ。これは、オレンジダイヤモンド。千年に一度しか咲かない宝石の花から生まれるダイヤモンドです。オレンジダイヤモンドは、あなたとまわりの人たちをしあわせにするでしょう。フルールからのプレゼントです。受け取りなさい」
フィエリテは、うやうやしくフルールからオレンジダイヤモンドをふたつ授かりました。
「すごい! フルールさん、ありがとうございます!」
フルールの瞳は、やさしげでした。
「フィエリテ。あなたに会えてよかった。今宵の月の風の導きに感謝するわ。では、フルールはこれで消えるわ。ブドウパンの味、永遠に忘れません。パトリと、しあわせに」
馬のエフォールがフィエリテに近づきました。
月が雲に隠れました。
すると、景色は見慣れた草原になっていました。
フィエリテはエフォールに乗りました。
「不思議なこともあるものだ。さて、行くぞエフォール。となり村まで一走りだ」
フィエリテは服のポケットに、オレンジダイヤモンドをしっかりとしまいました。
フィエリテは、いつまでも心を大切にする男性でした。
フィエリテは、フルールのことを誰にも話すことはなかったということです。
今夜も月がきれいでしょう。
~おしまい~
童話 「フルールの瞳」 坂井 傑 @sakai666suguru666
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