第8話 だってこんなに青い

あの夜、君と誓ったことは嘘じゃないよ。


死にゆく世界を目の前にして、恐れてはいけない。


消えゆく世界を目の前にして、慄いてはいけない。


君を愛してたその時、星々に手が届くような気がした。


僕は幼いころ、庭の前に黙って立っていたら、


世界が消えてく不思議な体験をしたことがある。


セックスをしすぎたすれっからしの風俗嬢と、自己開示をしすぎて空っぽな作家は似てる。

ああ、何の役にも立たないことをつぶやいてたら健康を害する。


本当の智者は驚くほど鈍くさい。少なくともそのように映る。


大いなる智慧は無知に似ている。


かっこいいもんじゃない。


本当に鈍なんだ。


君がさかしらの知恵を落としたとしたら、


そこに残るのは、驚くべき聡明な鈍さであることがわかるだろう


それは濁流のようであり、


失わまいと努力して維持する必要がないものである。


失わないと努力しないと維持できないような知は本物ではないのである。


人はいつまでもつま先立ちしてはいられない。


永遠に女性的なものが、男性的で保守的なものを死においやり、新しいものを顕現させる。


ぼくたちの青春の幸福はたちまちすぎてしまったね。


もうあのころには戻れないよね。


夏のセミの声は、ただひたすら切なく響くのみであった。


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