第2話 一人の孤独、二人の孤高

「あのさ。」

「うん?」

「よっちゃんって猫っぽいよね。」

「そう?」

「うん、なんかなつく人にはなつくよね。」

「なつくって…まぁ、確かに?」

「でも他は興味なし、ってとこ?」

「言えてる。」

りゅーの言葉に私は笑った。


私はいわゆる影が薄い人間というやつのようで、クラスでも浮いている。

それでいいとも思う。

実際、それで心地いいし、騒がしいのは苦手だ。

若人はいいな、元気で。

まぁ、私もそうなんだけどさ。

そういう意味では龍式、通称りゅーはまさに「若人」だ。


元気な子


それに尽きる。

クラスでは明るく、よくクラスとつるんでいる。

まさに「理想」だ。

まぁ、私にはなれやしないが。


…。

なんだろうな。


もやもやする。


「例えばさ。」

「うん?」

「動物になれるなら何になりたい?」

「何、そのざっくりとした質問は。」

私はベンチの一番右側でパンをほおばりながら聞いた。

「ほらさ、前話したじゃん、猫の話。」


…そいえばしてたか。


「その話の続き。」

「…あぁ。」

「で、何になる?」

「うーん…狼かな。」

「狼?かっきぃのー。」

「うっさい。」

「ははっ、大丈夫大丈夫。笑わないからさ。」

「もう笑ってるし。」

「それはノーカンで。」

「…はいはい。」

「狼か、なんで?」

「狼ってさ、よく独り立ちするつて言うじゃん?」

「あぁ、一匹オオカミ?」

「うん、一人でも強く生きれるってすごいなぁって思うからさ。」

「ふーん…いまのよっちゃんでも十分だと思うけどなぁ。」


ドキリと鼓動が強く感じた。

顔に出ていないだろうか。


「…うん、かもね。」


私の口から出たのはそんな曖昧な言葉だった。

返答のような、そうでないもの。

視線が定まらない。

どこか何もない場所を目で追う。

ふーん…、とりゅーは少し考えるように天を仰ぐ。

そして、でもさー、と口を開く。


「狼も群れるでしょ。」


ぞわり


体中に衝撃が走った。

なんだ、どうなった?

群れる?

群れるだって?

なにこれ、思考が、考えが追い付かない。

落ち着け、落ち着くんだ。

顔に出ているかもしれない。

顔を下に向かせる。

りゅーは今、どんな顔をしているのだろう。

自分の靴ばかり視界に映している自分が憎い。

体は熱いのに、どこか寒い。

心臓の鼓動が早く、強く、響く。

おちつ、け。

早く、早く大丈夫と言うんだ。

早く、は…


「明!!!」


はっ、として脳内の言葉は消えた。

頭がぼんやりとしている。

ふと、背中辺りにぬくもりを感じる。

横を見るとりゅーが私の右腕を抱いていた。

その顔には涙が見えていた。


「落ち着いて…大丈夫だから…。」


そういいながら、彼女は泣いていた。


「…泣いてるの?」

「お互い様だよ、ばかっ…。」

と、私の肩に軽く頭突きをした。


「…ごめん…。」


しばらく私たちは声を殺して泣いた。

周りにに気づかれないように、こっそりと。


「ねぇ。」

「…何?」

「このままさぼろうよ。」

「…うん。」


迷いなんて無かった。

彼女と、彼女という「狼」と二人で群れていたかった。

一緒にいたかった。



































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空気は空(から)で。 おぼろい @oborogoto6

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