さよならのゆくえ


ある時を境に、会わなくなる人はいる。

特に、別れも言わずに、ただ、何となくまた会える気がして。

そうやって、もう何十年も会っていない人はごまんといる。


学生時代の友達なんて、最たる例だ。


ふと思い出すのは、本当にありふれた日常の一コマ。

あの時は当たり前すぎて、何も考えずに過ごしていたのに。

今、振り返ると。

とてもかけがえのない日々だったりする。


同時に思い出すのは。


恋とまでは呼べない、淡い想いを抱いた相手。


あの人は元気にしているのだろうか。

何となく、同じような大学に行ったので、どこかのタイミングで会える気がしていたのに。

結局再会も出来ないまま、月日は流れてしまった。


あの人はどんな大人になったのだろう。

どんな家族を持ったのか、未だにひとりなのか。

想像力の欠如で、どうにもうまく想像できない。


あの人とは何もなかったのに。

あの人とは何もなかったからか。

必ず思い出と結びついてくる人。


たぶん、区切りをつけるタイミングを逃したせいで。

自分の中で美化されているのだろうか。

心の中で、笑いが漏れた。


言い忘れた、

「さよならのゆくえ」は、

一体どこにあるんだろう。


あわよくばあの人が、幸せだったら良いのにな。

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短編集 彩-sai- @chukon_sai

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