限りなく透明で、繊細な赤


あの子の指先が、色を追う。

そして、世界が拡がっていく。


彼女の作品は、そういうものだ。


とても繊細に見えて、とても力強い。

人が描いたものに、そんな感情を抱くとは思わなかった。

それくらい、芸術に関しては、無知。


何が良いものか。どこが悪いのか。


評価を下す審査員の言葉を、ぼんやりとかみ砕いていく。

要するに、好みの問題だなぁと。


評価しろと言われたら、たぶん、彼女の作品を素晴らしいと言うのだろう。

でも、彼女の作品は選ばれない。

私からしたら不思議だが、芸術をかじった人ならば悪い部分を挙げられるようだ。

芸術なんて、不確かなものなのに。

そんな評価に惑わされて、苦しんだ彼女を見る。


写真の中でも、嬉しそうな表情はない。


彼女はどうやって笑うんだろう。

どんな声を出すのだろう。


もう、想像でしかわからないけど。

もし、芸術で例えるとしたら、


「限りなく透明で、繊細な赤」

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