第11章
「私が知っている“ジャム”については以上だ。君たちはまだ小さかったからね…。この話を好んでするものも殆どいなくなったし、君たちにこの話をすることはないと思っていたのだかね。」
ルイスは苦笑いをして、窓のほうをへ立ち上がり、外を眺めた。
「教えてくださってありがとうございます。」
「決めるのは君だ。私にできることがあれば、また相談しに来なさい。」
僕は頭を下げ、帰路に就いた。
途中、声に引き留められた。
「やあ、また会ったね。どうだった?君の聞きたかった話は聞けたんじゃないかな…?」
声の主は昼間の布を被った男だった。
彼に構わず、通り過ぎようとも思った。
だが、僕の知りたいことを知っていた男について知りたいとも思った。
「あなたに言われた通り、ルイスさんが教えてくれました。」
「それはよかった。」
男はクスっと笑うと、僕に近づいてきた。
「それで……?君はどうするんだい?」
それは“ジャム”を受けるのか、受けないのか、ということだろう。
僕は悩んでいた。
僕が“ジャム”を受けると言ったら、両親はどう思うか。
この話をエリーやフィンにしたら、どう思うか。
ここまで育ててくれた両親に対して、自殺行為とも思えるジャムを受けたいと言うのは、最低のことなのではないか。
何も答えない僕に、彼は言葉を続けた。
「君はジャムを受けるべきだ。そして必ず力を手に入れるだろう。……そんなに悩まなくてもいい。君は選ばれた側の人間だ、今力を持っていないのが不思議な程にね。」
「どうしてそんなことが言えるんだ。受ける前から成功すると分かるなら、その者だけに受けさせるべきでは無いのか。」
「うーん、そう思うのは当然か。残念ながら、受ける前から成功が約束される人間なんて本来はいない。君を除いては……ね?君は特別なんだよ。」
僕が特別……?
「なぜ僕にそこまでしてジャムを受けさせたいんだ」
「君ならネージュを使えるようになる。必ずね。君に力を持ってほしい、そんなに怖い顔しないで、俺は君の敵じゃない。君だってネージュを使えるようになりたいだろ…?」
僕の聞きたいことの答えになっていない。
とにかく彼は僕にジャムを受けて、力を持って欲しいようだ。
「ジャムを受けない…と言ったら?」
「君がどうしてもジャムを受けないっていうなら、君の大切な家族を手にかけることになっちゃうかも。…そんな手荒な真似をしたくない。だから僕は交渉しているんだよ。」
交渉…?どこが交渉なのか。
「僕には脅しにしか聞こえないね。後には引けないってことか…。」
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