第12章
どちらにしても、力を持たずして首都には行けない。
僕の村でユイストについて調べ、治すための手段を考えるのには限度がある。
「ジャムの内容を知りたいのだが、知っているのか?」
男は小さく、仕方がないなぁ、と言うと話し始めた。
「簡単に言うと、ネージュは本当は誰もが持っている力なんだ。力を使えるものは、生まれつき力が解放された状態なんだ。君のように使えない子は、力が体内に閉じ込められているだけ。その力を開放することができれば、ネージュは誰でも使うことができる。だから、“ジャム”とい実験が行われるようになった。」
「その話を聞いている感じだと、死を伴うような実験には聞こえないな。開放するためにはどうするんだ?」
「これ以上は俺の口からは説明できないな。後は実験を受ければわかるさ。この実験の内容は国家秘密だからね。国でも一部の人間しか知らない。」
強制的にジャムを受けさせられることになったが、僕はそこまで悪い気分ではなかった。
家族を手にかけると脅されたにも関わらず、得体の知れないこの男の言葉を信じて、ジャムを受けることにしている。
自分がどうなっても家族を守りたい気持ちのほうが大きかった。
僕がジャムを受けさえすれば、家族に害はない。
「それじゃ今日はこの辺で。あ、俺の名前は、ヴェン・クリチャード。ジャムの実験日にまた会おう、ナイズ・ミディアくん。」
彼はそういうと、風のように消えてしまった。
「なんで、僕の名前知ってるんだよ…」
帰宅すると、エリアが夕食の準備をして待っていてくれた。
「おかえりなさい、今日は遅かったのね。」
「ただいま、ジャムについて進展があったんだ。」
「本当に!?それは良かったわ!何がわかったの?」
僕はヴェンから聞いたネージュの仕組みについてエリアに話した。
「なるほど…そういう仕組みだったのね。ジャムを受ければ、力が解放出来るかもしれないってことなのね!」
「そうなんだ。エリー、お願いがあるんだ。もし受からなかった時に、母さん達に気を遣わせたくないんだ。僕がジャムを受けることは黙っていてくれないか?」
「そういうことなら分かったわ。頑張ってね、ナイ。エルダースノウで一緒に学べるって信じてるからね。」
「僕もだよ。エリーと…フィンと一緒に学校に行けることを願ってるよ。」
エリアにジャムが死を伴う実験だということは伝えなかった。
伝えなかったという言い方では語弊があるだろう。
その内容を僕は、伝えられなかった。
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