第10章
ジャムの成功者となった彼女は、“ジャム”がどういうものなのか、受験者たちがどうなったのかを、どうしても家族に、これからジャムを受けようと思っている者たちに伝えたかった。
ジャムは……
非人道的な実験であることを…。
「私は彼女の言葉を聞いたのだ。その日、村の者たちは彼女に訴えを、願いを聞いたのだ。」
ルイスはそう言って、コーヒーを一口飲み、話を続けた。
“私はリチェル・フレードです。本日行われたジャムで成功者となりました。”
彼女の声は放送で村中に響き渡った。
村人たちは、彼女の言葉の続きを待っていた。彼女が“ジャム”を受けて初めて帰ってきた人間であり、ジャムについて、実験を受けたもの達の行方について、話が聞けると思ったからだ。
“皆さんにどうしても伝えたいことがあり、エルダースノウから脱走してきました。どうか私の言葉を信じていただきたい。あまり時間がありませんので、詳しいことまで話せません。ジャムを受けたものがどうなったのか、そのご家族には知る権利があると思い伝えます。彼らは……皆死んでゆきました。ジャムの成功者になれなかった者は死に至る。ここ2年間で成功者はおらず、私が初めての成功者だと言われました。私は皆さんが信じてきた希望を、砕いてしまうことを伝えているのかもしれません。でもこれが真実です。ジャムとは非人道的な、死を伴う人体実験なのです。このことを…ど、…か……多くの……、知ら…ほ……。”
突然彼女の声が聞こえにくくなったかと思うと、それを最後に声は聞こえなくなった。その後彼女がどうなったのか、見かけたものは誰一人としていない。
彼女の言葉を受けて、泣いている者も居れば、激怒してる者もいた。
“そんな実験だと知っていれば、家族を向かわせなかった。”
“危険なことを伏せて、実験に参加させていたなんて許されることか。”
“私の家族を……返して…!!!”
残されたものたちの中には、国に抗議するものを居たが、相手にされなかった。
所詮私達、力のないものでは、力のあるもの達には勝てない。
リチェルが伝えたことを広め、ジャムについての記載のある書物を燃やし、今後ジャムを受けるものを減らすよう動いた。
これから生まれてるくる子、まだ幼い子達にこの話を教えてはならない。同じ悲劇を繰り返してはならない。
エルダースノウに入学するのを躊躇う者も増えた。
エルダースノウにいる者たちは、ジャムに加担している者たちだからだ。
“エルダースノウ”と“ジャム”について話すものは減った。
特に、力のない子の前では。
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