第9章
エルダースノウが設立されて間もなく、“ジャム”という試験が行われることが発表され、国中で話題となった。
今まで力の無かったものが、力を得ることができる。ネージュの使い手になれるなんて、不可能だと思っていたことが可能だと言われれば当然の反応ではあった。
“ジャム”はエルダースノウの入学の時期に合わせて年4回行われ、場所はエルダースノウの近くにある研究所で行われるという話だ。
初めての“ジャム”が行われた時の受験者は200人を超えていた。
集まった者は順番に中に案内され、誰一人出てくるものはいなかった。
中でどんなことが行われているのか、受験者たちはどこへ行ってしまったのか。
なぜ誰一人として帰ってこないのか。
受験者の家族たちはエルダースノウに回答を求めたが、返答はなかった。受験者と連絡を取るすべもなく、ただ受験者たちは試験に合格し、エルダースノウで学んでいると思うことしかできなかった。
エルダースノウで勉学に励んでいる。
ネージュの使い手となり、上手く使いこなせるように努めている。
そのため連絡がないのだと思うしか、残された者たちに希望はなかった。
その後も“ジャム”は行われ続けたが、どんな内容の試験なのか、受験者達はどこへ行ってしまったのか。わからないことばかりの試験を受けるものは徐々に少なくなっていった。
エルダースノウが建設されて2年が過ぎたころ。そのころには、ジャムを受けるものは10人程になっていた。
ジャム第12回目、とても寒い冬の日だった。成功者の“リチェル”によってジャムがどういうものなのか、国民が知ることとなった。
彼女の名前は“リチェル・フレード”。幼いころに両親を事故で無くし、祖母と二人暮し。まじめな彼女は国のために働きたい考えていた。
だが、彼女にネージュはなく、何か他の形で国のためになる仕事を探していた。
そんな時“ジャム”が行われ始めた。
彼女はすぐに受けに行きたかったが、育ててくれた祖母を一人にすることはできず、ジャムを受けることを思いとどまっていた。
そんな祖母までもが、彼女を残し亡くなってしまったことで、彼女はジャムを受ける決心をした。
ジャムについて、彼女はよく知らなかったが、受けたものと連絡が取れず、どうなってしまったのかもわからない状況になるということは、すっかり広まっており、彼女に耳にも届いていた。
雪の降る中ジャムを受けに行った彼女こそが、ジャム初めての成功者となったのだ。
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