第5章




家に帰ると、エリーが食事の準備をしているところだった。



「ナイ、おかえりなさい」


「ただいま」


「どうだった?フィンのお父様に話を聞けた?」



彼女には今日僕がフィンの父親に話を聞きに行くことは伝えてあった。



「いや、彼の父親は既に首都に戻っていた。」


「……そう。」



彼女が残念そうにしたのはすぐに分かった。僕だってそう聞いた時には、態度には出さずとも落胆していた。



「そう落ち込むばかりでもない。実はフィンがジャムについて少し知っていたんだ。」






--1時間前。



「あっ!そう言えば、君に伝えたいことがあったんだ!」


彼はすっかり忘れていた、と言いながら話し始めた。



「実はこの間お父さんが帰宅した時に聞いたんだ。僕が通う学校、“エルダースノウ”では定期的に力の無いものに力を与える実験を行っているという事を。」



まさかさっきの今でこの話が聞けるだなんて、誰が予想できただろうか。


彼は知っていたのだ。“ジャム”の存在を…。

僕は出来るだけ落ち着いて答えた。



「それは…本当なのか?」


「間違いないよ。僕のお父さんは今回この実験に立ち会っていたんだ。」


「その話…もっと詳しく教えてくれないか?」



こんな偶然があってもいいのだろうか。

彼の父親がその実験に立ち会っていた…。


早く知りたい気持ちを必死で抑えて、彼の言葉を待った。



「この実験は“ジャム”と呼ばれている。首都ではネージュ使って治療したり、機械を作ったりして暮らしているのは知っているね?」


僕は頷いた。


「つまりネージュを使える者は多いに越したことはない。力の強い者、弱い者もいるが使えるに越したことはない。さらにこの力を使える者は近年減ってきているみたいなんだ。そこで考えたことが2つ。1つは、上手く力を扱えない者が使いこなせるようにする学校を作ること。もう1つは力のないものに力を与えることさ。」



統計的に、ネージュを持っている者が減っていることは知っていた。


だからこそネージュを使える者は大切に扱われた。



「学校の方はもちろん“エルダースノウ”のこと。もう1つの考えこそ“ジャム”。僕もどんな実験なのか内容は詳しくは聞いてないけれど、行われる頻度は年に4回。新しく生徒を受け入れるタイミングと同じらしい。」



「つまり次は2ヶ月後ってことだな。」



次の生徒受け入れのタイミング、つまりエリーとフィンが学校に入るタイミングということだ。



「そうだね。エルダースノウにはネージュさえ使えれば誰でも入学可能。ジャムの成功者になれば同じように新入生として入れるってことなんだろうね。」



僕が成功者になれれば、エリーやフィンと同じタイミングで、同じように新入生として入れるってこと。


僕の未来が少しづつ明るくなるように感じた。






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