第3章




「そんなことがほんとうにできるのか?」


「ええ、間違いないわ。ただ、誰もが手にできるわけじゃない。それもまた選ばれたものだけ…と言うべきなのかしら。」



僕は彼女の言葉の続きを待った。絶対不可能だと思っていたことに、少しの可能性でもあるのならそこに賭けたい。藁にもすがる思いというやつだ。



「ネージュを持つものだけが通える学校、名前は“エルダースノウ”。元々は私のように力の扱いが上手く出来ないような者のために作られた場所みたいね…。そのエルダースノウで年に4回、“ジェム”と呼ばれる実験が行われてるらしいわ。それが、“力の無いもの”を“力のあるもの”にする実験。」



実験、、、

その響きはあまり良くないものに聞こえたが、今の僕にそんなことはどうでもよかった。



「……エリー、そんな話どこで知ったんだ?」


単純な疑問だった。僕達はもうすぐ18歳になろうとしている。それなのにそんな話は今まで1度も聞いたこと無かったからだ。



「この話はたまたま来ていた旅のお方に聞いたのだけれど、その時は半信半疑だったわ。だけどフィンのお父様の、“今回は久しぶりにジャムの成功者が出た。”この言葉を聞いて、もしかしてあの話は本当なんじゃないかって思ったわ。」



分からないことは2つあった。


1つ目はどうしてこの話を母さんと父さんが僕達に教えてくれなかったのか、だ。


エリーは稀に見る強い力の持ち主だ。彼女を学校に入れて、ネージュを自在に使えるようになれば首都に行かせられたはずだ。

僕にしたって、力を手に入れられるかもしれないのだ。この話を僕達にすることにはメリットがあるように思うが両親はこの話を黙っていた。“知らなかった”というのも考えられなくはないが…。



もうひとつはその旅人はどうしてエリーにこの話をしたか、だ。


どういう経緯でこの話をエリーにしたのか分からない。それはもしかするとたまたまだったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。そうじゃない場合、彼女にこの話を教えたかったと考えるのが普通だろうか。


僕の考えすぎということだって大いにある。



1度は力が手に入るならなんでもいいと思った僕だが、この性格は変えられそうにない。

結局感情のまま動けないのだ。


これは長所であり短所でもあるだろう。



「エリー、その話を僕にしてくれてありがとう。僕はその“ジャム”を受ける。」


「ナイならそう言うと思っていたわ。本当はエルダースノウに行くのが不安なんだわ。ナイも一緒なら安心だもの。」



僕は彼女のその言葉が嬉しかった。なんでも出来て、夢に向かって努力している彼女が僕を頼りにしてくれることが。





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