人のよい雪だるま
まだ秋だというのに、フェルスハントの森では季節外れの大雪が降りました。
森番の息子は大喜び。さっそく、森番小屋の軒下に自分と同じ背丈の雪だるまを作りました。目と口は石炭のかけら、鼻はニンジン。両腕にブナの枝を差し、赤いバケツの帽子まで被った立派なものです。
さて、その晩は前の日よりもひどい吹雪が吹き荒れました。小屋の近くの木から子リスが下りてきます。小麦粉の袋から出てきたように真っ白です。
子リスは雪だるまに話しかけました。
「雪だるまさん、雪だるまさん、ここで休んでいいですか。うっかり巣穴から出て、風に飛ばされてしまったのです」
雪だるまは答えました。
「どうぞどうぞ」
そして、子リスのために少しずれ、場所を空けてあげました。雪だるまは、人の寝静まった深夜なら自由に動けるのです。
しばらくすると、今度はウサギの親子が現れました。
「雪だるまさん、雪だるまさん、ここで休んでいいですか。巣穴が雪で埋もれてしまいました」
雪だるまは答えました。
「どうぞどうぞ」
そして、ウサギの親子に場所を空けてあげました。
次に現れたのはコマドリです。
「雪だるまさん、雪だるまさん、ここで休ませてください。巣が壊れてしまいました」
「どうぞどうぞ」
雪だるまはまた場所を空けてあげました。
こうして、続々とやってきたシカや野ネズミ、カササギたちに場所を譲り、雪だるまはとうとう軒下から出てしまいました。
朝になり、雪が止みました。動物たちは礼を言って森へ帰っていきました。
お日さまがぐんぐん昇って辺りがぽかぽかと暖かくなっていきます。森番と奥さんが目を覚まし、小屋から声が聞こえます。
雪だるまはこっそりつぶやきました。
「しまった」
軒下からすっかり出てしまったので、お日さまの光が全身に当たるのです。雪がみるみる融けて水になっていきます。戻ろうにも、朝になってしまったのでもう動けません。
雪だるまはあきらめて、気持ち良く日向ぼっこすることにしました。
お昼過ぎに森番の息子が外に出ると、小屋のそばに石炭のかけら、ニンジン、ブナの枝が二本、そして赤いバケツが散らばっていました。森番の息子は全部冬まで大切にとっておいて、その冬に新しい雪だるまを作りました。新しい雪だるまは冬の間ずっと、夜な夜な森を駆け回り、朝になるまでにはちゃんと軒下に戻っていたということです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます