異世界巨大迷宮攻略大作戦 part 1






4/17更新


プロローグ前後編の追加


第一部分から第九部分までの章、『新参者』の題名と序盤部分の内容の変更。

題名『新参者』→『白き獣の少女』

基礎的な部分に変更は少ないですが、大きく変わった部分もあるので、読み直し推奨です。


こちらの都合により、お手数をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。





____________________




 私、トモはディメさんのお仕事のお手伝いでカバン持ちというものをやっていました。

重たいカバンをなんとか持ち上げてディメさんの後をついていくお仕事です。


ニッシュさんのお店でお昼ご飯を食べた後、ディメさんの出したドアをくぐってついていくと、広い広い草原に出ました。

草が生い茂り、キレイな青空が広がっていました。

遠くには大きな山見えました。

ちょうちょもヒラヒラと飛んでいて、お花にとまったりしていました。

気持ちのいい風が吹く、のどかな風景でした。


そんな草原に大きな洞穴がポツンとそびえていました。

真っ平らな草原に洞穴が一つだけあるのは、なんとも不思議な光景でした。

その洞穴はどうやら地下まで続いているようで、真っ暗な入り口がこっちを見つめているようで、背筋が寒くなってきます。


ディメさんはその洞穴をすこ洲の間眺めた後、そのまま洞穴に背を向けて歩いていきます。

私はそれに気づいて慌てて追いかけると、私が振り向いた先に緑色のテントが張ってありました。

どうやらディメさんはそのテントへと向かっているようです。

中何が入っているんでしょうか?


考えながら歩いていると、テントに到着したようで、ディメさんはテントのカーテンを少し開いて中に入っていきました。

私がたじろいでいると、カーテンの隙間からディメさんが手だけを出して手招きをしてきました。

これは…入れということでしょうか?

私は恐る恐る中へと入っていきました。





たくさんの目。





テントの中の私より高い位置の薄暗闇の中から、宙に浮いたたくさんの目が見下ろしてきました。

私はびっくりして固まってしまいました。

しかし、よく見てみればそれは目のおばけではなく、人でした。

私を見下ろす人達は、折りたたみのテーブルを囲んでパイプ椅子に座っていました

でも、もっとよく見てみると、人間だけじゃなくて、ディメさんのような人ではない何かが何人か座っていました。

そんなたくさんの目にじっと見つめられて、私は怖くなって腕を抑えてうずくまりそうになってしまいました。


私が冷や汗をかいていると、ディメさんが私に向けて手を向けました。


「あーこないだのパーティーにいなかったやつもいるからな、改めて紹介しよう…こちらはトモ、新しく俺らの仲間入りをした…トモ、ここにいるのは全員俺と同じ悪魔だ」


ディメさんがそう言って腕を組みました。

何かを待っているようです。

私がディメさんを見上げていると、ディメさんに睨まれて、気づきました。

私は慌てて悪魔の皆さんに頭を下げました。


「わ…私は、ディメさんのお家で、い、イソーローをしています、ト…トモです…よ、よろしくお願いします…」


私はそう言って頭を少し上げて、ディメさんの顔をチラリと見ると、ディメさんは少しうなづいた後、テントの奥へと歩いていきました。

私は安心してホッと息をつきました。




「ねえねえ!君君!」


「ひゃっ!」


私の近くにいて椅子に座っていた女の子が、急にずいっと顔を近づけてきました。

私はびっくりして声が出てしまいました。


その女の子の見た目は十四歳くらいで、淡いピンク色の髪の毛がキラキラと光って、石鹸のいい匂いがしました。

頭には真っ赤なカチューシャ、服は髪よりも濃いピンク色で、フリルや飾りがいっぱいついていて、、リボンがついていて、スカートは短くて…とっても可愛いお洋服を着ていて、それが彼女にすごく似合っていました。


そんな姿をした女の子が、キラキラしたピンクの瞳で私を鼻と鼻がくっつきそうなくらいの近さで、私を見つめていました。

女の子はニコニコと笑顔を浮かべて右手を差し出しました。


「こんにちわ!あなたが噂に聞くトモちゃんね!僕、あなたに会えるのを楽しみにしてたんだよ!」


私は差し出された手と、女の子を見比べた後、恐る恐る手を出しました、

すると女の子は私の手を両手で握って、激しく上下に降りました。


「僕は”恋の悪魔”ラブユー!よろしくね、トモちゃん!」


「よ…よろ…よろしく…お、おねがが…い…し、しまず…」


腕が動くのと一緒に体や顔も動いてうまく話せませんでしたが、私はなんとか挨拶をすることができました。


急に、激しく上下に振られていた私の手が離されました。

私は振られていた勢いで後ろに倒れてしまいました。


「そこらへんにしておけ」


聞いたことのある声。

目を回していた私はなんとか起き上がりました。

すると、私の目の前に大きな人影が立っていました。


「ル…ルイン…さん…?」


そこにいたのは、ディメさんのお家で一緒に暮らしている、煙の悪魔のルインさんでした。

片手でラブユーさんを持ち上げていました。


「どうして…ルインさんが、ここに…?」


「俺もディメの手伝いでここにいるんだ…あくまでテントの見張りだがな」


そう言うとルインさんは、ラブユーさんを横に下ろしてから、私を優しく持ち上げると、私の顔を見てからそっと地面に下ろしました。


「大丈夫か?」


「は…はい、あ…ありがとう…ございます…」


私はぺこりと頭を下げました。

ルインさんは満足そうにうなづくと、横にいるラブユーさんを睨みつけました。


「あんまり乱暴なことをするんじゃない」


「ごめんなさーい。いやーこの子が可愛かったもんでつい…」


ラブユーさんは申し訳なさそうにしていましたが、笑顔で言っていたので何だか嘘っぽく見えました。

しかし、笑顔でわたしに向かって手を振っていて、悪い人には見えませんでした。


すると、今度は別の悪魔が話しかけてきました。

その悪魔は、肌が灰色で、色あせたコートを着ていて、そのコートのフードをかぶっていました。

頭には髪の毛は銀色で、長いツノが一本額から生えていました。


「やあ、こんにちは。俺の名前はモルデさ。よろしくね」


そう言いながら歩いてきて、片膝をついてわたしに手を差し出しました。

…握手かな?

わたしはゆっくりと手を差し出して、モルデさんの手を握ろうとしました。


すると突然、近くに立っていたルインさんがモルデさんの腕を掴みました。

掴まれたその腕のコートの袖口から、小ぶりなナイフが一本、滑り落ちました。

ルインさんはそのまま捕まえようとモルデさんの腕を釣り上げました。

それに対抗するかの様に、モルデさんはコートの内側からナイフを取り出すと、それをルインさんの顔へ向けて突き出しました。

ルインさんはそのナイフによる鋭い突きを、首を傾けただけで避けると、腕を掴む手とは逆の手でナイフを持った手に手刀を放ちました。

モルデさんがナイフを落とすと、そのまま地面に叩きつける様にして腕を背に回して組み伏せてしまいました。


「…モルデ、なんのつもりだ…?」


ルインさんはモルデさんを鋭く睨みつけて、問いただしました。

するとモルデさんはニタリと笑うと、首を回して顔を後ろに向けて、ルインさんを見上げました。


「んー?なに、ちょっとこいつを殺してみたくなっただけさ…ちょーっと顔を切って血を見てみようってだけだよ」


わたしはそれを聞いてすぐにルインさんの後ろへと隠れました。

モルテさんに舐め回す様に見られて、背筋が寒くなってしまいました。

そ…それに、わたしを殺すって言って…

す、すごく…怖いです…


そんなわたしの姿を見て、モルテさんはより一層笑顔になると、さらにわたしに話しかけてきました。


「なあ、お前の腹をなにふで突き刺して見たらよお?一体どんな声でお前は鳴くのかなあ?どんな風に苦しむんだ?なあ?」


そう喋りかけられて、わたしはより一層怖くなってしまい、ルインさんの足にしがみついてしまいました。

こ…この人…す、すごく怖い…です…


わたしが震えてしまっていると、ルインさんはいきなりモルテさんの頭を殴りつけました。


「ぐげっ」


モルテさんは潰されたカエルの様な声を出すと、そのまま気絶してしまいました。

そのままモルテさんをテントの隅に転がすと、モルテさんはわたしを持ち上げた、腕で抱えてしまいました。


「ひゃあっ!?…ル、ルインさん!?」


「どうにも危ない思考の連中が多い…安全のためにも、少しの間こうさせてもらう…嫌だろうけど、ちょっとの間我慢して欲しい」


「は…はい…」


わたしはなんだか恥ずかしくなってしまい、赤くなっているであろう顔を隠すために、着ている服のフードをかぶってしまいました。

そんなわたしの様子を不思議そうに見た後、ルインさんは視線を前へと向けました。


「…まあ、後の連中は名前だけでも覚えといてやってくれ、トモ」


そうディメさんに声をかけられて、わたしは何とか顔を上げて、ディメさんを見ました。

ディメさんは私たちのいるテーブルの反対側へと腕を向けました。

わたしも視線をその腕の先へと向けました。


そこには、三人の悪魔が座っていました。


「まず、こいつは”回転の悪魔”。元気なやつだが、たまに鬱陶しくなるから付き合い方には注意しろ」


そこには、顔を中心として竜巻きの様なもので頭全体を覆われた、中華服の様なものを着た中学生くらいの背丈の男の人が座っていました。


「ははは。散々な言われ様だけど、否定はしないよー。僕が”回転の悪魔”、ロッテイさ!よろしくね!」


そう話しながら、ロッテイさんは小さく手を振りました。

わたしも手を振り返すと、ロッテイさんは嬉しそうに笑いました。

その無邪気な笑顔から、ディメさんの言った通り元気のいい方だと感じました。


次にディメさんは、その隣に座る方に手を向けました。

その人は、アロハシャツに短パン姿で、黒っぽい肌に大きな一つ目だけの顔、頭からは内側へと曲がった二本の角が生えていました。


その悪魔は、わたしへ向けて手を挙げると、自己紹介を始めました。


「おっす!俺は”火山の悪魔”ヴォルケイノス!気軽のヴォルケ…もしくは気軽にヴォルっちって呼んでくれ!…何なら、兄貴って読んでくれてもいいぜ?ブラザー!」


そう話すヴォルケさんを尻目に、ディメさんはわたしの方を向いて話しました。


「…とまあ、こういうやつだ。温かい目で見守ってやってくれ」


「は…はい…?」


そう言われてわたしは困ってしまい、首を傾げて返事をしました。

しかし、ヴォルケさんはあまり気にしていない様で、そのままわたしをキリリとした凛々しい?顔で見ていました。

それに対して、わたしはどこに視線を向ければいいのかわからなくなって、下を向いてしまいました。



最後の一人は、白いワイシャツに赤と青のしましまのネクタイ、黒いズボンを履いていて、黒い肌に大きな一つ目、頭からは真ん中が曲がって先の方が真っ直ぐなツノが生えていました。


その悪魔さんは、スマホをいじっていましたが、少しだけ顔を上げました。


「”迷宮の悪魔”、ウームブ…よろしく」


それだけ言うと、すぐにまたスマホの画面へと視線を戻してしまいました。

わたしは何か気に触ることを言ってしまったのかと焦ってしまいました。

わたしが慌てていると、ルインさんがわたしの頭に手を置いて静かに撫でました。


「気にするな、こいつはこういうやつだ」


ルインさんはそう話していましたが、わたしは撫でられているのが心地よくて、目を瞑ってうとうとしてしまいました。


すごく、眠くなってきました…

重いカバンを持って、長い長い道を歩いて、おいしいお昼ご飯を食べて、お腹いっぱいになって…



すごく…すごく…ね…む…





…スゥ…
















「おいおい、ガキが寝ちまってるぞ?」


テントに入ってきた”幻想の悪魔”ファジーが、トモを見るなり、そう口にした。

その目(目玉の頭)は不機嫌そうに瞼を歪ませた。


ルインは静かにトモの頭を撫でながら、トモを起こさないようにゆっくり静かに近くのパイプ椅子に座りました。

そのまま小さな声で、ファジーに返した。


「疲れたんだろう、ゆっくり寝かしてあげよう…子供は寝るのも仕事のうちだ」


そうルインが言うと、ファジーは「けっ」とルインに返事して、そのままテーブル近くの椅子に座り足をテーブルに乗せて、頭の後ろで手を組んで背もたれに寄りかかった。


「勝手にやってろ」


そう言ったきり、ファジーは何も言わなくなってしまった。

目玉の瞼を閉じてしまい、寝ているように見えたが、ただ目を瞑っただけのようだった。


ファジーの入ってきた数分後、今度は一頭身の自称神、マァゴがテントの中に入ってきた。

その大きな目玉でトモを見つけると、嬉しそうのスキップしながら近寄ってきた。


「トモ…!」


「しーっ…」


ルインがトモを撫でていた手で人差し指を立てて、顔の前に立てた。

マァゴはその場で急停止すると、両手を丸い体の下部分に当てた。

どうやら、それで口に手を当てているということになるらしかった。


そのまま静かにルインの側まで近寄ると、その腕で抱えられてん眠っているトモの顔を覗き込んだ。


「フフフ…ぐっすり寝ちゃって…トモちゃんかわいいなあ…」


マァゴは楽しそうに笑うと、トモの頭を撫でた。

するとトモは、嬉しそうな笑みを浮かべた。

それがまた嬉しいらしく、マァゴは楽しそうにその場で小さくジャンプした。


「…楽しそうなとこ悪いが、そろそろ今回の仕事の説明をするぞー」


ディメがテント内の全員に声をかけた。

トモが起きないように声量を落として。

すると、テント内の悪魔たちは全員椅子に座り、ホワイトボードの前に立つディメへと視線を向けた。





「ではこれより、ガデリオン平原巨大迷宮攻略殲滅作戦の概要を説明する」



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