第24話
近所の人たちの話では両親の葬式も埋葬も全てを自分で済ませて置きながら記憶が残っていない!?
俺は周囲の涙を誘うほどに両親の死を悲しんでいたというがその両親の顔さえ今ではハッキリとは思い出せないのだ。
信也の話では火事があった日、俺は仕事が休みで実家へ帰省していたらしいのだが両親と一緒に車を購入する為に出掛けた日だったに違いない。
あまり外出をしない俺なのに深夜に起きたあの火事で家に居なかったのは偶然なのだろうか?
燃えさかる炎を見ながら家に飛び込もうとする俺は近所の人に止められ、泣き喚いていたそうだが一体、何の為に外出していたのか?
火事のことを思い出そうとすると頭痛がして意識が薄れてしまいそうになる!
きっと忘れてしまいたい何かがあったに違いない。
もしかして逃げる清志と淳二の姿を目撃した・・・?
だが、それならばむしろ忘れるべきではないことじゃないか!?
記憶の無い怖さに震える俺だった。
スイッチが入ったり切れたりするように俺の人格が変わってしまうことは色んな人の話を聞くことでわかったし、その際に別の人格である自分の記憶が無かったり本来の俺である自分の解釈で知らないうちに塗り替えられている。
正義のヒーローでありたいが為に人間として間違った行為をする時には人格が変わり記憶は残らないという自分に対して都合の良いように変わっているのだとすれば清志と淳二が放火犯人だと知った俺が何をするかわからない!?
自分を制御する為に俺という人間を理解してくれる誰かに助けてもらうしかない!
それを頼む相手に俺は親友の信也では無く、自分が愛する沙希さんを選んだ。
彼女にとって重荷過ぎるかも知れない?
だが彼女を頼りたいと思った俺は我儘なのだろうか・・・?
あれからも信也は何かを真剣に考えてるような感じでお互いに何となく会話が少なくなっている・・・
それはそうだろう!
違う人格を持ち、何をするかわからない俺と同じ部屋の中で寝起きしているのだからきっと気味悪いに違いない。
そんな信也に俺の行動を見張っていてくれと頼むことは俺のそばから常に離れないでいてくれと言ってるようなものだ!?
信也は一人で外出することが多くなった気がする・・・
何が起こるかわからないという緊迫感から少し抜け出したいと他の誰かと一緒に過ごしたい時もあるだろう。
俺はまた突然、違う人格になるかも知れないという恐怖心を持ってはいたが孤独を感じることは無かった!
信也の言動はこれまでと同じで変わり無く、出掛ける時にはちゃんと俺を誘ってくれてるのだが俺だけが彼に気兼ねして距離を置いているだけなのかも知れない?
俺はそんな自分に底知れぬ罪悪感を持ち始めていた。
そう言えばこんな感情を持ったことがあるような・・・?
ふと、そんな風に思った俺は部屋の中をグルグルと落とした何かを探すみたいに歩き回った。
「ん!?・・・何かな?」
俺は信也のベッド下に何か落ちているのを発見した
きっと落ちた拍子にベッドの下に転がり込んだのだろう?
そう思った俺は信也のベッドを少し持ち上げ、そこに落ちてた鍵を拾い上げ
「これは何の鍵なんだろう?」
何だか見覚えがあるような、無いような感じがして考え込んだ。
俺の頭の中に黒いキャリーバッグが浮かび上がった!
クローゼットの中に今も置いてあるだろうそのバッグが何だか気になって仕方がない。
親友の持ち物を勝手に開けて見てはいけない!
そう思った俺はその鍵を信也のベッドの棚に置こうとした瞬間、急激な眠気に襲われ床に倒れてしまった・・・
また違う俺が目覚めようとしているのか!?
何事も起こらないようにと願う気持ちを無視するかのように俺の意識は次第に薄れ深い闇へと落ちて行く。
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