第21話
「大丈夫なのか!?」
身体を激しく揺さぶられて目覚めると信也の姿があった。
「帰ってから声を掛けたんだが起きる気配が全然、無かったから死んでるんじゃないかと思って慌てたよ」
「そう言えば具合が悪くて会社も休んで寝てたんだったな?」
「俺の勘違いで無理やり起こしてしまって悪かった」
信也は目を開けた俺を見ながら安心した表情で謝った。
「あぁ、いいんだよ・・・なんか夢をみてた気がする」
「誰かが俺の名前を呼びながら必ず助けるって叫ぶんだ」
まだ意識がハッキリしてないから憶えているのか、独り言みたいに呟いた俺のベッドに座った信也は
「そうか、俺だってお前の友達なんだから助けてやるぞ!」
冗談っぽい口調であったが真剣な目でそう言った。
「唐突で信じられないような話だから困惑するかもしれないけど信也に話したいことがあるんだ・・・」
「俺だって信じたくないことだから他の誰に話しても多分、信じてもらえないと思う内容だけど聞いてくれるかい?」
俺の言葉に信也は黙ったまま頷くと椅子を持って来てベッドの脇に置き、腰掛けた。
俺は起き上がるとベッドに座りベランダで偶然、聴いた清志と淳二の会話の全てを信也に話し終わると
「あの2人の会話が本当だとすれば起きた放火事件の犯人は清志と淳二で俺じゃ無いってことになるんだけど俺には事件の記憶が全然、残ってないんだ・・・」
「どんな理由があったのかは知らないがどうして清志は自分の家族を、そして淳二は仲の良い友達の家族をあんなに残酷な方法で殺したりすることが出来るんだ!?」
最大の謎である2人の強い殺意を彼に訊いてみた。
「ちょっと待て!」
「お前の記憶はあれから本当に戻っていないようだな」
「そうじゃないんだ、あの放火事件で殺された家族のことだがお前の記憶の中で被害者が違う家族に塗り替えられてる」
「もしかしてお前はあの火事があった場所に行って来たのか?」
信也の質問にあの日調べて回ったことを話した。
「その時、何も違和感みたいなものは感じなかったのか!?」
「遊びに行ったことも無く、どこに住んでたかもわからない清志の実家にお前はどうやって辿り着けたんだ?」
不思議そうな顔で訊いた信也に
「俺の頭の中に少しだけど清志の家の記憶が残ってたんだ」
「その記憶を頼りに歩いてたら消失して空き地となった清志の実家をみつけることが出来たんだよ」
「近所に住んでる人たちを探しながら詳しい話を聞いたんだけど誰も詳しい話を知らなくて結局、ネットで調べたよ」
俺の答えに驚きながら信也は
「ネットで調べたのにお前は気づかなかったのか!?」
そう訊いた信也に
「だから調べて事件の内容も犯行手口も大体は掴めたよ」
俺はそう言うと印刷した資料を自分の机の引き出しを開けて取り出すと信也に渡した。
何か悩んでるような険しい顔で資料を丁寧に眺めていた信也はその中から1枚を選び、俺に返しながら
「それをもう一度、最初からよく読んでみてくれないか?」
悲痛な声で言った。
信也から受け取った資料を読んだ俺はそこに書かれていた被害者の名前を読み、手が小刻みに震え始める・・・
「こ、これは・・・どうして俺の家族の名前が書いてあるんだ!?」
なぜ今まで気づかなかったのだろうか?
予想もしていなかった現実を目の前に突き付けられた俺は驚きと困惑、悲しみ、怒り、次々と形を変えながら押し寄せる感情に抗う術も無いまま泣き崩れた。
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