第15話
俺が聴いた信也と清志の会話は数日前の話なのに清志の実家は数か月前に火事により存在しなくなっている。
念の為に他の数人に尋ねてみたが答えは同じだった
ただ不思議なのはあの家のことを訊こうとすると必ずと言っていいほど全員が興味深そうな顔をする!
それだけ興味を持っていながらハッキリとしたことは言わなくて断片的な記憶ばかりなのだ。
火事の原因も火の不始末から放火まで憶測の域を出ない不確かなものばかりで明らかに誰もが係るのを怖れている!?
結局、ネットで詳しく調べてみると警察や消防の現場検証では誰かが家屋の周囲に大量の灯油を振りかけて火を点けたらしく、一気に燃え広がった火に逃げる余裕も時間も無かったそうだ・・・
目撃者も無く、防犯カメラも無い地域なので犯人の手掛かりすらみつからずに現在も捜査中ということだった。
やっぱり俺はみんなが言うように夢でもみていたのか?
清志の実家が薬局であったことは確かだったがどうして彼はコンビニであると俺に嘘をついたのだろう?
この惨劇を思い出したくなくて話を逸らす為に言ったのか!?
この件に関してはこれ以上、触れない方が良さそうだ。
誰かが俺を騙して面白がってたんじゃなく俺自身が断片的な夢をみて現実と混同していただけに過ぎない・・・
大切な仲間を疑った自分が情けなくて後悔した。
俺が意識を失くすほど眠くなったりしたのは誇大な妄想を抱き過ぎて疲れていたからなんだろうと考えればいい!
だが大型のカッターナイフを握り締め、血だらけの服を着たまま床に倒れてた俺は本当にあの猫を殺してしまったのか!?
夢遊病者みたいに意識が無いまま歩き回る自分の姿を想像しただけで寒気がして来る。
「やっぱり病院に行った方がいいのかなぁ?」
俺は沙希さんにそのことを相談してみた。
「自分で自分が変だと思わないから精神病だと思うけど何か他に見えていない原因があると思います」
「見たことも無い凶器で知らない間に殺してしまうなんてことがあるなんて私には想像出来ないです」
「それにそんなことを病院で言ったら病気だと決めつけられてしまうかも知れませんよ!?」
「私には優音さんがそんなことをする人にも見えません!」
「もう少し様子をみてからでも遅くないと思います・・・」
彼女の返答に俺は頷きながら見えてないモノがあるとすればそれは一体、何だろうと考えてみた。
誰かに監視されてるような気配は俺だけじゃ無く、彼女もそれを感じてるみたいだし、もう少し様子を見ながら考えた方が良さそうな気がした。
付き合ってくれたお礼に彼女と昼食を食べたが彼女は太ると俺に嫌われるからと言って同じモノを2人で食べた
時々、彼女に食べ物を載せたスプーンを口元に差し出すと照れ笑いしながらパクっと食べる仕草や飲み物をストローで交互に飲む行為は親密なカップルそのものであり、それが俺は嬉しかった!
別れ際に彼女を抱き締めてキスを交わした俺は社員寮へ帰ったが、まだ交代時間でも無く、誰とも顔を合わせることなく自分の部屋に入りシャワーを浴びて着替えを済ませた。
冷蔵庫から取り出した例の炭酸ジュースが入ったペットボトルをコップに入れかけた俺は慌ててシンクに流すと別に買い置きしておいた小さなボトルを開けて飲みながらベッドに横になる・・・
急速に眠気に襲われた俺はボトルを置くのがやっとの状態で深い眠りへと落ちてしまった。
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