第12話

「お疲れ、体調の方は大丈夫だったか?」

今朝は何となく気まずくなってしまったのだが信也は何事も無かったかのように声を掛けてくれた。


「今日は俺、寄りたい所があるんで先に帰っててくれ」

急に呼び出しても沙希さんと会えるかわからないが相談したいこともあったので信也にそう言うと

「そうか、だったら俺は先に帰るがまだ体調も万全ってわけじゃないんだから何かあったらすぐに連絡しろよ!」

信也は帰り支度を済ませると俺に明るく声を掛けながら先に帰って行った。


こんなにいい奴が今の俺を笑うはずが無い!

だがあんなに仲が良かった4人だったのに俺一人だけが皆と違う行動をしているのはどうしてなのか?

あの日、4人で集まったことは本当に俺の夢だったのか?

そうじゃないとすれば他の3人は嘘をついてることになる。


3人が共謀して俺に嘘をついた

もし、そうだとすれば一体、何の為に!?

こうやって精神的には確かに追い詰められてるが俺がそんな状態になることで誰が得をするのだ?

それとも俺をからかって面白がってるだけで後になって実は、なんてネタばらしするつもりなんだろうか・・・

そもそも俺は何であんなに深い眠りに落ちたり意識を失ってしまうんだろう?


そう言えば清志の実家は信也の話だと薬局だったはずだが何でコンビニに変わってるんだろう?

潰れかけた薬局で後始末を手伝いに行ってるとか・・・

もしかして睡眠薬とか飲まされて意識を失くしてるんじゃ!?

俺があの部屋に行った時、飲み物はすでに注いであった

俺が買い置きしてたジュースのペットボトルも開けてあった!

信也はあのジュースを飲んですぐ眠ってしまった気がする。


俺もあれを飲んですぐに眠くなった

他にも信也が買ってきてくれた栄養ドリンクもそうだ!

何だか強烈な味がしたが俺はあれを飲んで意識を失くした。


あの栄養ドリンクは清志が俺に飲ませろとか言って信也に渡したものだとすれば薬局の後始末で手に入れた睡眠薬を混ぜて飲ませることも出来る・・・

何が理由でこんな茶番を演じているのか知らないが、それなら俺だって自分で調べて暴いてやるのも面白い。


悪戯にしては度を越えているが自分の行き先が何となく見えて来たようで少し気分が良くなった!

沙希さんから会えるという返事があったので嬉しさも倍増した俺は上機嫌で約束した場所に向かった。


急な呼び出しにも関わらず彼女は先に来て待っていた

俺は明るく挨拶を交わすとここに来るまでに考えた疑問点を彼女に話して一緒に清志の実家を見に行こうと誘った。


彼女はそれをデートの誘いだと思ったのか嬉しそうに喜ぶと即答で一緒に行きたいと言ってくれた!

親友を疑うことに申し訳なさを感じたが彼らが悪戯のつもりでやってるのなら俺も悪戯心で調べるぐらいは構わないだろうという軽い気持ちだった・・・

だが、いつの間にか俺の目的は彼女とのデートに変わってしまっていた。


そして俺は翌朝、体調不良で病院へ行くと信也に嘘をつき、会社を休むと身支度を丁寧に整え最寄りの駅に向かった。


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