第8話
耳元に置いた携帯のアラーム音で目を覚ました俺は緩慢な動作で起き上がると時間を確認して焦った!
沙希さんとの約束の時間がすでに過ぎていたのだ。
目覚ましに使った携帯のアラーム音で目覚めたと思ってたがどうやら偶然、起きたらしい?
どこかにもう出掛けてしまったのか、信也の姿はベッドに無く慌ただしく支度を整えた俺は部屋に鍵を掛けて階段を駆け降りると約束の場所へと急いだ。
もう30分以上、遅れている・・・
寝過ごしてしまった自分を罵りながら角を曲がるとそこには彼女の姿があった!
「遅れてしまってすみませんでした」
全力で走った俺は汗まみれの姿で彼女に謝った。
「そんなに謝らなくても優音さんの姿を見たら懸命に急いで来てくれたことが良くわかります」
沙希さんは俺を見ながら可笑しそうに笑いながら言った。
彼女が遅れた俺を待っていてくれたことや怒ってなかったことに感謝し、安堵しながら気になっていた携帯を取り出すとアラーム設定を確認した。
やっぱり設定するのを忘れていたのかぁ・・・
そう思った俺は携帯をポケットに入れたのだが不可解なことに気づき、再び取り出し確認し首を傾げた。
その様子を見ていた彼女が
「何か大事な連絡でも入るんですか?」
俺の都合が悪かったのではないかと心配し、不安そうな顔で遠慮深く訊いた。
「あっ、違うんだよ」
「携帯を目覚まし代わりに使ってたんだけど起きれないほど熟睡してたかアラームを設定し忘れてたと思って確認したら履歴が全く残ってないんだ」
「音がうるさかったから信也が削除したのかなぁ?」
そう思ってみたが彼なら俺を叩き起こして止めさせるだろう。
ふと気が付くと俺に寄り添うような形で彼女は俺の携帯を一緒に覗き込んでいた。
ほのかなシャンプーの香りが漂い、ドキッとした俺が慌てると彼女は申し訳なさそうに
「すみません、見たら悪かったですね・・・」
そう言って俺に謝った。
「そ、そうじゃなくて沙希さんが近くに居たので焦ったというか恥ずかしかったんで慌てただけです!」
それは何だか彼女のことを好きだと言ってるような気がして俺は照れながら携帯を見せて説明した。
「言われてみれば次の為に履歴まで消しちゃうことは無いと思いますけど記憶に無いほど疲れてたんですか?」
心配そうに尋ねる彼女に俺はこれまで起こった出来事について嫌われるのを覚悟で全部、話した。
俺の話を興味深く聞いた彼女は
「記憶のことは私にもよくわからないので優音さんを信じるしか出来ませんが誰かに見られてるような気配は最近になって感じることが私にもあります」
何気なく周囲を見ながら小声で言った。
自分の周りで何かが変わり始めている・・・
何かを怖れるような彼女の小さな声が俺にそう確信させた。
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