第6話
「うぅっ!」
目覚めた俺は激しい頭痛に呻き声を上げた。
習慣的に腕時計を見ると午前6時だった
仄暗い中で周囲を見回すと見慣れた自分の部屋である
酔った俺を信也がここまで連れて来てくれたのだろうか?
そう思ってベッドから起き上がった俺は自分が作業着であることに気づき疑問を感じた。
仕事が終わってシャワーを浴びて私服に着替えた後に隣りの部屋へ信也と2人で行ったはず・・・
途中で酔いが回った俺はその部屋で寝てしまった。
順を追って記憶を辿るがこうして作業着で寝ていた理由がどうしてもわからない!?
考えているうちに急な吐き気を覚えた俺は慌ててトイレに駆け込むと胃にあったモノを吐き出してしまった!
何とも形容しがたい気分の悪さにふらつくように立つと取り敢えず隣りに行ってみようと服を着替え始める。
クローゼットから意識を失う前に着ていた服を取り出し、習慣的に匂いを嗅いでみたが何だか着た形跡が感じられなかった
洗ったままの匂いというか汗みたいな体臭がしないのだ!
確かにこの服を着て行ったはずなのに・・・?
記憶が次第に交錯して行く自分が不安になるのを抑える。
部屋の鍵と携帯を持った俺は部屋を出て鍵を閉めると隣りの部屋の前に立ちドアをノックした。
「なんだ、もう頭痛は治ったのか?」
ドアを開けた淳二がそう言って中に入れると信也と清志が口々に大丈夫かと心配顔で尋ねる
「部屋まで運んでくれてありがとう」
そう言った俺に3人は不思議そうな顔をする。
「何のことか俺には良くわからないがお前は俺が部屋の中に入った時、ベッドで頭痛がすると苦しんでたんだ」
「一応、頭痛薬は飲ませたけどまだ意識がハッキリして無いみたいだがホントに起きて大丈夫なのか?」
信也は説明しながら俺を自分の隣りに座らせた。
「えっ!?」
「俺はこの部屋でみんなと一緒に飲んでて酔ってしまったから寝てたんじゃなかったのか?」
俺がそう尋ねると
「お前はまだ夢の中にでも彷徨ってるのか?」
「この部屋に来たのは俺たちがここで飲み始めてから初めてなんだぞ、しっかりしてくれよ」
信也は困り顔で俺の背中を撫でながら言った。
彼は自分が部屋の中に入った時と言ったが俺と信也は2人で一緒に帰って来たんじゃないのか?
そのことを口にすると
「俺は電話したいから先に帰っといてくれってお前に言ったはずだが、そこまでは覚えてるか?」
俺が記憶を辿るように頷くと
「じゃあ、時間的にお前が先に帰ってるのは当前だろ?」
信也は真剣な表情で俺に問い掛けた。
そう言われれば確かにそうなのだが実際に俺が記憶してることとは大きくズレてしまっている!
何か他に思い当たることは・・・
少し考えた俺は清志の実家が店を辞めることを言った。
「何を言い出すんだよ」
「ウチの実家はコンビニやってて今も営業中だぞぉ」
「ここから遠いんで行くことは無いだろうが近くに引っ越すことにでもなったらウチの店で買ってくれよ!」
呆れ顔で清志はそう言うと笑った。
何が一体どうなってしまったんだ!?
もしかして俺は違う世界を行き来でもしてるのか?
自分の記憶に自信が持てなくなった俺は発狂寸前だった。
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