第5話

汗を洗い流し着替えを済ませた俺と信也は清志と淳二が待つ、隣りの部屋に向かった。


ドアをノックすると2人の笑顔に出迎えられ部屋の中央に置かれたテーブルを囲んで4人が座る・・・


「窓からお前たちが帰るのを見てたんで飲み物はコップに注いで置いたけど意外と手間取ったな?」

淳二がそう言いながらテーブルに置かれたコップを持つと全員がそれに合わせて自分の前に置かれたコップを持つ。


「じゃあ乾杯!」

いつものように信也の掛け声で4人がコップを合わせる!

しばらく雑談が続いた後に

「それで清志の実家は店を閉めることになったのか?」

信也は清志に尋ねた。


「病院が移転するってのならウチもそれに合わせて店を移転するんだろうけどその病院には後継者が居なくてなぁ」

「まぁ、病院って言っても診療所みたいなもんだから患者も近所の人ばっかりなんだけどな」

ちょっと笑うと話を続ける・・・


「大きな病院がちょっと離れた所にあるんで親父は今の店を閉めて、その辺りの薬局に勤めるのが決まったみたいだから心配は要らないよ」

「店の後始末が大変なんで手伝いに行ってるんだ」

清志はそこまで話すとビールを飲み干した。


彼は薬剤師を目指し、大学に通っていたが辞めてこの会社に俺と同期で就職して来た

辞めた理由は気まぐれだからと言うだけでハッキリとした理由は話さないので誰もそれ以上は詮索しなかった。


俺を含めて他の3人はいずれも専門学校を経て入社してるので垣間見せる清志の頭の良さに驚く時も数多い!

「でも男4人が集まって飲み会なんて寂しい限りじゃあるがこの中の誰かに恋人でも出来たらみんなで語り合うことも無くなるんだろうなぁ?」

しみじみと言った淳二の言葉に

「そうなったらその幸せ者をみんなで応援しなくちゃな!」

信也がそう応えると

「一番、モテそうな奴がそれを言っても効果ないぞ」

「俺なんかその幸せを一度も掴んだことないから応援する側に回されるのは確実だよ」

淳二はおどけて言うと大笑いした。


「じゃあ、今の所はこの中にその幸せ者は居ないってわけか?」

清志が全員の顔をじっくり眺めながら言うと俺はちょっと伏し目がちになりかけたがここで彼女のことを告白するわけにも行かず平静を装った。


「何を期待して見てるのか知らないが男4人が集まって女の話をしても悲しくなるだけだぞ!」

「もう少しマシな話をしろよ」

信也が冗談交じりに言うとそれもそうだと頷きながら違う話題へと切り替わって行った。


何だか色々なことがあって疲れたなぁ

ふと、そう思った俺はみんなの話し声が虚ろに聴こえてることに気づいてハッと我に返る!

まだ紙コップ2杯しか飲んでないのに・・・?

久し振りにアルコールが入った為なのか、それとも今日は予定より早く起きた為なのか?

酔いが急速に回って来た俺は段々と眠くなり始めた。


どれぐらいの時間なのかと腕時計をみたがここに集まって飲み始めてから1時間ほどしか経っていない

「どうした・・・眠くなっちまったのか?」

「遠慮しないで寝てていいんだぞ」

「帰る時にはちゃんと起こしてやるからな!」

信也の心配そうな声に頷いたような気がしたがそれさえもわからないほど俺は深い眠りへと落ちて行った。



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